RENORN!*短編

□桜の君
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サァァ・・・

桜の花びらが空から舞い降りてくる。

また、春が来た。
春には桜が咲く。
桜なんて大嫌い。
春にしか咲かない、弱い植物だから。 

桜みたいな弱い草食動物も大嫌い。
僕は一人が好き。

僕意外に、人なんているのだろうか?
他の皆はただの弱い動物なんだから・・・。


「・・・ねぇ。」
「は、はいっ」
「新学期早々遅刻?」
「ぇ、ぇ〜と・・・その・・・はぃ・・・」

どうせ、分かってたけど。
腹が立つ。

沢田綱吉・・・
遅刻ばかりの生徒。

おかげで僕はいつもこの草食動物を取り締まっている。
沢田綱吉は、僕を見上げる。

・・・体を震わせながら。

僕は一つため息をついた。
「・・・あのさ・・・」
「は、はい?」
「今日こそ・・・」
かみ殺していい?と言おうとしたその時・・・

クスクス・・・

「?!」

・・・かすかな、笑い声・・・
ウチの生徒ではない声。

「・・・誰・・・?」
「はい?」

沢田綱吉がキョトン、とする。

「なんでもない。それより・・・」

クスクス・・・

「・・・・・・」

・・・やっぱり、聞こえる。

「ねぇ。」
「?」
「何か・・・声がしない?」
「えぇぇ?! し、しませんよ!全然!!」

そういいながら、片手を横に激しく振る。

きっと彼はこの人は何を言っているんだ、と思っているだろう。

「…そう」

やっぱり・・・空耳・・・?

「あのぉ・・・そろそろいいですか?」
「? なにが?」
「チャイム・・・鳴るんですけど・・・」

・・・・・・。

時計を見ると、八時二十五分。

「・・・早くいきなよ。」
「は、はい・・・」

沢田綱吉は、僕を避けるように通り過ぎると、そのまま走っていった。

「・・・・・・」
その場に一人になった僕は、しばらくぼーっとしていた。

・・・その時

クスクス・・・

「!!!」
『あの』声がした。

クスクス・・・

なおも聞こえる声。
後ろ・・・?
僕は愛用のトンファーを構え、勢いよく振り向く。

「・・・・・・。」
・・・でも、誰もいない。

「・・・だれ?」

誰もいない空間に僕は話しかける。

クス・・・

僕の言葉で、笑い声が止まった。
まさか止まると思っていなかった僕は、突然でちょっとびっくりする。

「姿、現しなよ。」
「・・・あなた・・・私の声が・・・?」
ビックリしたような風に言った。

「・・・どういうこと? 私の声が・・・なぜ・・・?」
「? なに言ってるの? 普通に聞こえてるよ。」
「・・・本当? 本当に・・・?」

だんだん、声が震えてきてる。
不思議に思っていると、目の前の桜の木からガサッと音が聞こえた。

「・・・」

現れたのは・・・・・・

女の子だった。

僕達と同じくらいだ。
なぜ桜の木に・・・?

それより・・・
「君・・・遅刻だよ? それに私服・・・校則違反なんだけど・・・。」
そう、その女の子は桜色のフワッとしたやわらかそうなワンピースを着ていた。

そんな女の子は僕におかまいなしに話を続ける。
「ね、ねぇ・・・私の姿も見える・・・?」
・・・何をおかしな事をいっているんだろう。
「見えるに決まってるじゃない。」
僕が答えた瞬間、女の子は瞳から小さな雫をこぼした。
僕はなんだか分からない状況の中、女の子が泣くのを黙って見ていた・・・・・・
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