ブリスグランマ

あやまち
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「俺、ごめん、あの時」

 暫くの沈黙を思いきって破った先輩の声は少し戸惑っていた。僕はドキドキしながら首をもたげて、恐る恐る先輩の顔を見た。
 とてもかっこよかった。

「我慢、できなくて…ごめん」
「……謝らないでください」

 僕が口を開くと先輩は驚いたように目を丸くした。

「…謝られたくないです」

 だって謝られてしまったら、本当に壊れてしまいそうだから。嘘でも、嫌われてないって思いたいから。
 先輩は重々しく黙ってしまった。
 僕を、どう思ってるんだろう。僕は、食満先輩が好きで。だから襲われたときだって、嫌じゃなかったし、逃げたくもなかった。

「僕は、先輩に避けられてしまったことが、すごくびっくりして」
「さ、避けたというか、なんか、やっぱり気まずくて…」

 先輩が申し訳なさそうに言った。僕の胸は熱かった。

「…先輩」
「なんだ?」
「………僕、先輩が好きです」




 約束をした。あの日のことを僕が誰にも言わない代わりに、先輩が僕の情扶になると。
 これでよかったのか分からない。だけどこうすれば、お互いに救われると思ったから。僕が勝手に先輩を好きでいていい理由になると思ったから。


「あ、はっ、んっ」

 あの日と変わらない手つきで、少し乱暴に僕を抱く先輩はやっぱりかっこよくて。
 けれど、いつまで経っても、接吻を求めて伸ばした僕の腕が先輩の首に回ることはなかった。








言い訳→

090721



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