ブリスグランマ
□あやまち
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「俺、ごめん、あの時」
暫くの沈黙を思いきって破った先輩の声は少し戸惑っていた。僕はドキドキしながら首をもたげて、恐る恐る先輩の顔を見た。
とてもかっこよかった。
「我慢、できなくて…ごめん」
「……謝らないでください」
僕が口を開くと先輩は驚いたように目を丸くした。
「…謝られたくないです」
だって謝られてしまったら、本当に壊れてしまいそうだから。嘘でも、嫌われてないって思いたいから。
先輩は重々しく黙ってしまった。
僕を、どう思ってるんだろう。僕は、食満先輩が好きで。だから襲われたときだって、嫌じゃなかったし、逃げたくもなかった。
「僕は、先輩に避けられてしまったことが、すごくびっくりして」
「さ、避けたというか、なんか、やっぱり気まずくて…」
先輩が申し訳なさそうに言った。僕の胸は熱かった。
「…先輩」
「なんだ?」
「………僕、先輩が好きです」
約束をした。あの日のことを僕が誰にも言わない代わりに、先輩が僕の情扶になると。
これでよかったのか分からない。だけどこうすれば、お互いに救われると思ったから。僕が勝手に先輩を好きでいていい理由になると思ったから。
「あ、はっ、んっ」
あの日と変わらない手つきで、少し乱暴に僕を抱く先輩はやっぱりかっこよくて。
けれど、いつまで経っても、接吻を求めて伸ばした僕の腕が先輩の首に回ることはなかった。
終
言い訳→
090721