ブリスグランマ

こっへこへにしてあげる
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小平太がいない。よくあるこの現状に冷や汗が流れることはこれと同じようによくある。名前を呼ぶ声がどれほど小さく籠もっていても必ず現れる小平太が、数回響いた自室の奥から現れない。また変な気を起こしていなければいいのだが。


早朝から学園中を探し回って太陽は昇りかけ、辺りは薄暗くなってきた。やっとの事で小平太を見つけたのは敷地の端にある焼却炉の前だった。何の前触れも無くふっと振り向いた小平太の目を見て息を詰めた。


「遅いよ長次」
「……」


大きな、大きな目玉が、もしかしたら飛び出してくるのではないかと思うくらい、兎に角凄い勢いで俺を捕らえていて、何とも言えない体の悲鳴が咽に込み上げ背中が瞬時に冷たくなった。


「見つけてくれないかと思った」


そんな目を柔らかく曲線で包み、口調は優しく、小平太はそうして恐ろしいほどの美しい笑みを作り上げた。


「……………何を、していた」
「帰ろう長次」
「………小平太…」


見えた、暗い朝日に照らされた小平太の制服。真っ赤に染まった胸から太もも。気付かない訳がなかった酷い異臭。どうして問うたのだと自分に後悔の波が襲いかかる。小平太は綺麗な顔をゆっくりと持ち上げ、跳ねるように笑った。


「鉢屋を焼いた」


小平太の焦点が外れ、俺はとうとう小平太から目をそらした。見ていられない恐ろしい何かを目の前に差し出されたような気分だった。


「……何故、鉢屋…なんだ…」
「だって長次、不破のこと好きだろ?不破に変装した鉢屋なんかはどうでもいいだろ?可愛い後輩殺しちゃったら長次が可哀相だから、ちゃんと要らない方の不破にしといた」


ちゃんと。


「不破も、顔は残ってるから大丈夫だろ?」


無邪気に笑う小平太の声が、こんなに近くにいるのに遠くの知らない人のものに思えて、いっそ耳を引きちぎって聞こえなくしてしまいたいと強く思った。


「みんな長次が好きなんだな。むかつく。死ねばいいのに。みんな殺したい。私は誰よりも一番長次が好きだぞ?長次もそうだろ?長次は私だけを愛して、私だけとセックスするんだろ?」


小平太はまるで俺をここに繋ぎ留めるかのように首に抱きつき、犬歯で俺の首筋を甘噛みした。


「…あぁ…」
「だよな、そうに決まってる」


果てしない奈落に落とされる感覚。体は依然冷たいままだが、触れる小平太はおかしいくらいに熱くて、俺の微量な熱まで吸い取っていってしまいそうだった。焼却炉の煙突から昇る細い煙が風に煽られ解けた。









あれ?えろがない


090811



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