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「サヨウナラ」
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『サヨウナラ』と言ったら、君はどんな顔をするのかな。
いつもニコニコしている君の表情が曇ってしまうこと、想像出来る。


だって、ねぇ、ハイド、俺はずっと君のことばかり見てきたんだ。

嫌いになったわけじゃない。
何が悪いわけじゃない。
でも、もう一緒にいてはならない。

君も感じているはずだね。

このままでは、いられないこと。


互いを求める力が日増しに強くなっていって、張り詰めた糸が切れようとしている。
そんな気がするんだ。

切れた糸は、元に戻らない。
―俺達も、元には戻れない。


相手の手がなくても…、俺はハイドの手がなくても、立てる。
歩ける。
それに気付いたんだよ。
相手を思うあまり、先へ先へとその手を引き過ぎていた。

でも、ふと周りを見渡すと、失ったものの大きさに気付いて、得たものの幸福に気付かされる。
泣きたくなるくらいの幸福に。
二人で築いたものの多さに。


だから、一人でも大丈夫。
そう思ったんだ。

一人でも歩ける。
ハイド、君も。

もう俺の手から離れても、歩いて行けるんだよ。


ケンちゃん達と笑いながら話している君を見て思う。

ねぇ、ハイド、笑っていてね?
いつも、君らしく。


「てっちゃん」


話に区切りがついたのか、君が俺を呼ぶ。


「何?」

「あんな、今日の夜、みんなで食事しようって。行くやろ?」

「…うん」


行くと信じきっている君が、愛しくて。


「ほな、みんなに言うてくる」


くるりと背を向けた君へ、呟いてみる。


「…サヨウナラ」


君は立ち止まって振り返り、不思議そうに首を傾げるけど。


「何?」

「何でもないよ」


ほんま?と呟くから頷いたら、少し笑ってそこを去る。


「…サヨウナラ」

去った君へ呟く。
これで、最後だね。
糸が切れないように、俺は。


「サヨウナラ」


君がいつも笑っていてくれることを、ここから願うよ。


俺の、愛しい人。
いつも、笑っていてね。


たとえ、この手が離れても。



fin.

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