peacherry

□続 新たな始まり
2ページ/25ページ


「日向には、済まないと思ってる。本当ならお前も…。」

琅珠が何を言いたいのかは何となく分かる。学校へ通っていない俺に、玻月達を学校に送る仕事をさせるのは申し訳無い…と言った所だろう。

「幻泉鏡に居ても、学校には通えて無かったんだ。仕事だって探すの大変だったと思うし、俺は感謝してるから。」

俺が使用人になった経緯は、一部の人達の思惑でもあった。18歳までは学校に通った方が良い…と、王家の皆は使用人になるのを反対してくれたんだけど、最終的には、俺の意志で決めた事だから、後悔していない。

「…いや。本当に、色んな意味で済まない。これからも辛い思いをさせてしまうと思う。」

「色んな意味?…あ、嫌がらせの事?管理局員は、城内担当みたいに、子供じみた嫌がらせとかは無いから、平気だよ。嫉んでる人は居ると思うけど…。」

俺がそう言うと、琅珠は、また無言でコーヒーを飲んだ。何か喋ると思ったけど、コーヒーカップをテーブルに置いても、何も喋らないし、俺も、あまりゆっくりも出来ないから、残りのコーヒーを飲みほして、立ち上がった。

「じゃぁ、行くね。コーヒーご馳走様。」

「あぁ。汐璃はこれからも迷惑かけるかもしれないが、汐璃の事頼むな?」

あはは…。それが言いたかったのかな。汐璃も聡程じゃないけど、方向音痴だもんね。城内でも、たまにまだ迷子になってるし。まぁ、そんな時は、内緒で、瞬間移動してるみたいだけど…。それに蝶学なら玻月達が居るから心配する事もないと思う。

「汐璃ならきっと大丈夫だよ。じゃ、行ってきます。」

俺は、琅珠にそう言って汐璃の部屋へ向かった。

トントン
「開けていい?」

軽くノックをして、声をかける。

「日向!」

数秒後、勢い良くドアが開き、満面の笑みを浮かべた汐璃が顔を出した。

「おはよう。制服それにしたんだ?」

この前、国王と汐璃が制服のカタログを見ていた時、俺の意見も聞かれたんだけど、正直俺には良く分からないから、答えられないまま仕事に戻った。だから、どれになったのか気にはなってたんだけど、どうやら、国王が一押ししていた物になったみたい。

「うん!パパと決めたんだ。」

制服を来てるせいか、いつもより幼さは目立たないけど、会話するとやっぱ子供っぽい。蝶学で同い年の人と上手くやっていけるといいんだけど…。

「日向?」

お節介とも言える心配をしていると、汐璃は不思議そうに俺を呼んだ。

「あ…もう、行ける?」

「聖羽ちゃんが、起きるの少し遅かったから、聖羽ちゃんが支度終わってれば行けるんだけど…。」

そう言って汐璃は聖羽瑪の部屋の方へ目線をやった。

このフロアは階段を囲むように正方形の廊下があって、1辺を除き他の辺に当たる部分にドアがあり、それぞれに、玻月・汐璃・聖羽瑪の部屋が割り当てられている。

残りの1辺は、国王夫妻の部屋と渡り廊下で繋がっていて、国王夫妻の部屋がある場所も、階段を囲むように正方形の廊下があり、3辺に部屋が1つずつある。

汐璃の部屋は階段を上がりきった正面にあり、汐璃の部屋から、階段を挟んだ正面に聖羽瑪の部屋がある。

汐璃が聖羽瑪の部屋を見たので、俺も振り返って聖羽瑪の部屋に視線を移した。

予定では、玻月と聖羽瑪はリビングにいるから、汐璃を部屋まで迎に行った後、リビングに寄って、3人を車に乗せる予定だったんだけど、聖羽瑪がまだ部屋に居るなら、、聖羽瑪にも声をかけないとならない。

「もう、起きてはいるんだよね?」

念の為汐璃に確認する。

「うん。30分位前に起きたよ?」

「じゃ、様子見て来るよ。」

寝ている聖羽瑪にだけは関わりたくないから、汐璃の答えを聞き、聖羽瑪の部屋に足を運んだ。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ