peacherry
□翔君の恋
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一目惚れなんて
本当にあるとは
思ってなかった
過去にしてきた恋愛とは違う感覚に
俺は、本気で恋したと言う事に気付いた…
†翔君の恋†
バコッ!
「何、黄昏れてんだ!」
授業中、窓の外を見ながら、先週会った汐璃の事を思い出していた。
同い年には見えない、小さくて可愛い彼女に、俺は恋したようだ。
しかし、そんな俺のピュアな心を打ち砕くように、数学科の教師は、教科書で俺の頭をぶった。
「いや…愛について考えてました。」
真顔で言うと、女子数人はクスクスと笑い、玻月を含めた男子数人は、呆れたようにため息をついた。
「そうか…。じゃぁ、数学を愛せるように、課題を出してやろう。明日までに問題集の…「先生、充分愛してますから!」
シーン
あれ?
「…済まんが、俺は生憎妻子持ちなんでな。」
「は?…あっ、違…」
「翔君って、そう言う趣味持ってたんだぁ…。」
女子が騒ぎ出す。
「ち…違う!俺は数学を愛してるって意味で…。」
課題を避ける為に言った台詞なのに、主語が抜けた為、とんでもない騒ぎになってしまった…。
◇◇◇
噂と言うものは直ぐに広まるもので…
「翔、俺、驚いたよ。まさか…」
学食で、玻月とお昼を食べていると、聖羽瑪が声をかけて来た。
「聖羽瑪、お前わざと信じてるだろ…。」
「何言ってんの?もう、カミングアウトしちゃったんだから、今更照れる事もないでしょ?」
こいつ…
「聖羽瑪く〜ん!」
遠くで、女子が聖羽瑪を呼んでいる。
「じゃ、俺行くね。俺のファンクラブの人もさ、男であっても、ゲイだと嫉妬の対象になるから。」
聖羽瑪は楽しむと言うより愉しんでいる。しかし俺に向けた意地悪な笑顔から、よそ行きの笑顔に表情を変えて、呼ばれた女子の方へ去って行った。
「聖羽瑪君、大丈夫?」
一人の女子がヒソヒソとこっちを見ながら言っている。
「聞こえてんですけど…。」
ふて腐れていると、玻月が、俺を宥める。
「ま、噂なんて直ぐに忘れ去られるよ!頑張れ。」
優しい言葉だけど、絶対楽しんでいる。
友情より笑いを選んだ玻月は、「そう言えば使用人にお姉キャラ居たな…」等、言い出す始末。
玻月…お前がその気なら、こっちだって考えがある。
お前も道連れだ…。