peacherry

□ピーチェリー
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初めて会ったあの日

碧く澄んだ瞳に写る清らかさを

真っ直ぐに見つめる瞳の偽りのなさを

冷淡な瞳の奥にある優しさを

この3つを守る為に仕えようと心に決めたんだ。


†ピーチェリー†



「で?日向(ひゅうが)は、どっちがいいと思う?」

聖羽瑪(きょうま)に睨まれながら聞かれた。

聖羽瑪は、俺が15歳の時、王家専属の使用人として受け入れてくれた国王の末息子。
末息子ながら、上にいる姉や兄よりしっかりしていて信頼もある聖羽瑪だけど、頭が良い分悪知恵も働き、そんな聖羽瑪に、時折逆らえなくなる事もある。

「お前、日向を困らせるなよ。」

聖羽瑪の兄、玻月が横から口を挟んだ。

「意見が分かれたんだから、第三者に決めてもらうしかないだろ?それに日向の仕事にも関わって来るんだし。」

「だからって…」

二人が口論を始める。

俺が口を出す事ではないから、俺は二人をただ黙って見つめていた。

何を揉めているのかと言うと、聖羽瑪と玻月が通う蝶衣学院(ちょういがくいん)で、今日から始まる蝶学祭と言う文化祭に、汐璃を招待するかしないかと言う事で揉めている。

玻月は、あまり城から出させて貰えない汐璃の為を思って招待したいと主張し、聖羽瑪は外出許可が出ないのはそれなりの理由があるからだと主張して、二人とも一歩も譲らない。

「廊下で朝から何を騒いでいる。」

その声に三人が振り返ると、汐璃をおんぶした琅珠が立っていた。

「また、琅珠の部屋に行ったの?」

さっきまで目を吊り上げて口論していた二人は、汐璃を見るなり優しい表情になった。

「あぁ。」

琅珠は聖羽瑪の問いに答えて、汐璃の部屋へ入っていく。

聖羽瑪と玻月がそれに続いた為、俺はその隙に逃げようと、そっと後退りした。

「日向の意見、まだ聞いて無かったよね。」

聖羽瑪はこっちを見ないで言う。口調は優しいけど、その背中は”逃げる事は許さない”と物語っている。

「……汐璃の意見を先に聞くべきだと思う。」

遠回しに、玻月寄りの意見だと伝えた。

汐璃の事だから、文化祭に行けるよ?って言えば、喜ぶのは目に見えている。

「文化祭の話しか?」

琅珠が聖羽瑪に聞く。

「うん。」

「汐璃は、行ったら楽しそうだとは言ってたが…行きたいとは言ってなかったな…。」

琅珠は汐璃をベットに下ろすと布団をかけて、紙を手で掬うように撫で整えながら言った。


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