Silver Soul

□嘘つきのホント。
1ページ/5ページ

 



つきのホント






「ちょっと待てヨ!」


すたすたと出入口のドアに向かって進む沖田を神楽は引き止めるかのように叫んだ。

それと同時に勢いよく机が叩かれ、その衝撃に耐えられなかった机にメシメシと音をたてて亀裂が走った。


その大声と破壊音にクラスメートは驚きの目を向けたが、自分の事しか考えてない輩が集まる3Zにとっては日常茶飯事のため、皆、瞬時に自分の世界に戻る。


教室を出て行った沖田を追いかけようと、並列に並ぶ机の間を華麗に走る神楽だが、


「はっ、女のしつこさが滲み出たか。」


とぼやいた長谷川の机だけは薙ぎ倒した。
机にしまわれていた教科書やら求人情報誌が回転をかけながらスルスルと床の上を滑った。


そんな事は自分に無関係かのように教室を飛び出た神楽は少し離れた距離で振り向いた沖田に、


「何処行くネ?次は調理実習だから逆方向アル。」


腕を組み、仁王立ちで問いかけた。


だが、沖田は、

「便所だからついてくんなよ、変態。」

とからかって、トイレとは逆の曲がり角を曲がった。

その姿を呆然と見届けた神楽は、


「また嘘ネ‥‥。」


そう呟いて、騒がしい教室へと再び足を運んだ。






 

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ