Netzach
□Promise
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貴方は何時もと同じようにあたしをここで車から降ろし、何時もと同じように頬に触れるだけのキスをする。
それが、左様ならの代わり。
貴方の大好きなチョコレートの様に甘ったるい愛のコトバも、別れのコトバも無しに、黒い高層群の彼方に消えていく。
再会の約束なんて決してしない・・・。
こんな、数分後の命さえ危うい醜い世界で生きる、あたしたちにはそれがお似合い。
どうせ果たせない約束なんてアナタを苦しめるだけ。
甘い約束は−罪。
ヘッドフォンを
耳に充てる
ファズの利いた
ベースが走る
夕焼けには切なすぎる
涙
を
誘い出しているの?
手には不確かなものばかり。
ほら、さっきまであんなに感じてた貴方のぬくもりさえもこんなに冷え切ってしまった。
愚かなあたしは、そんな冷え切った紛い物の幻影にさえ必死で縋り付く。
せめて貴方の音を、空気を忘れないようにヘッドフォンを耳に充てる。
ファズの利いた、ベースが走る。
名も知らない、貴方のお気に入りの曲。
−−now Darlin` promise me and please tell me something words to soothe..............
海の彼方に沈んでいく今日を見つめながら静かに頬に雫を滴らせる。
I don`t wanna cry
泣きたくなんてないはずなのに涙腺が壊れたかのように涙が止まらない。
あたしはアタシを諫める。
『追うな、求めるな、割り切れ』
商売女は、時間と躯を売り見返り分の金額を貰えばそれでおしまい・・・。
それ以上の干渉なんて、この世界では自らの足を引っ張る以外の役になど立たない。
痛いほど分かっている、身に染みている。
それなのに、アタシの心はあたし以上に愚かでそれを拒む。
確かなものなんてないくせに、
確かなものを求めたがる。
約束なんて果たせないくせに、
約束を交わしたがる。
愛なんていらないと吐き捨てるくせに、
愛が欲しいと泣き叫ぶ
どう仕様もないあたしを責めるように、急に降り出した夕立が躯を冷たく濡らした。