Un romanzo
□サルミアッキ
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全くいらない、むしろ返品したいぐらいの食べ物をあまり親しくない人間から貰う、というのは全国共通で非常に困った事態である。
親切でくれたのだから突き返すことも、捨てることも出来ない。かといってそれを口にするのもはばかられる。
「ふむ・・どうしたものか・・」
手元にある白と黒の缶。パッケージには世界一まずい飴と名高いフィンランドの「サルミアッキ」。
ため息をつき、その缶を開けて中身を取り出す。
中に入っていたのは「世界一まずい飴」に相応しい真っ黒な飴。
つまむとぐにゃりとやわらかく、飴というよりグミと言った感じだ。
顔を近づけてついその匂いの強さに手に持っていたサルミアッキを落とす。鼻をつくような刺激臭はまるでアンモニアのようだ。
匂いだけで気持ち悪くなる。
(とてもじゃないが食えんな・・)
親切心でくれたであろうフィンランドに心の中で謝まる。だが、あれを食うぐらいだったらイギリスの料理を食べた方がましに思えた。
(いやどっこいどっこいだな・・)
イギリスのバイオテロ的なモザイクを思い出し、より食欲が失われる。
黒いその飴と言っていいものなのかすら危ういものを缶にしまおうと机に散らばったサルミアッキを集めた。
「ドイツー遊びに来たよー!!」
「イタリア!?ベルをならせと何度も・・」
「何コレ?うわ黒っ!臭ーい!!」
背後から突然飛びついてきた事を注意するも、気持ちがいいぐらい無視して机の上のサルミアッキをつまみ上げるイタリア。
ぷにぷにとその黒い物体いじるイタリアにため息をつきながら説明してやる。
「それはだな、フィンランドから貰ったサルミアッキという飴で・・」
「あ、飴なんだ!いただきー」
「こ、こら!!」
先ほど臭いだのなんだのいっていたくせに飴だと知る否や制止の声も聞かずイタリアは口に放り込んだ。その食意地には本当に驚かされる。
しかしそのイタリアもかみ始めてすぐに顔を真っ青にさせた。どうやら相当不味いらしい。目尻には涙が浮かんでいる。
「まずいよーっ!!イギリスの料理より不味いぃぃ!!ティッシュ!ドイツ、ティッシュゥゥ!!」
急いで吐き出そうとするイタリアの口を手で押さえて止める。砂漠ですらパスタを作る、その意地汚さを治す丁度良いチャンスだと思った。
泣き出しそうなイタリアににやりと意地悪く笑ってみせる。
「一度口にしたものは責任を持って飲み込むべきだと思うぞ?」
「ぅぅっ!ドイツのドS!!苦しみを味わえっ!」
「っむ!?」
不意に唇に柔らかいものが押し当てられ、すぐに口の中に何かが入り込んでくる。
と同時に口の中にゴムのような味がしたかと思うと今までに味わったことの無いような苦み。
とてもじゃないが嚥下できそうなものではない。
唇を離して一安心しているイタリアの首を力ずくで引き寄せ、イタリアの口内にあの驚くほどに不味い菓子を舌で押し込む。
「ん、ふ・・ゃ!」
「っお、前が飲め!」
「っい、やぁ・・」
そうこうしている内に二人の口の中でサルミアッキは溶けて消えた。
サルミアッキが消えたことを確認して唇を離す。二人とも方で息をするほどに息切れをしていた。
「ひ、どいよ、ドイツ!」
「勝手に、はぁはぁ・・食べる方が悪い!」
「あんな・・不味いもの置いておくのも悪いと思うよ!ぅえ・・気持ち悪・・」
サルミアッキ本体が消えたからといって決して口の中のあの殺人的な味が消えるわけではない。
舌がびりびりして正常な思考が出来ない。
「水、取ってくるぞ」
「あ、俺のも」
コップに二杯の水を両手に持ってイタリアに渡す。その無臭、無色に安心しながらコップに口を付けた。
「美味しい・・ね」
「ああ、驚くほどにうまいな」
正直、その何の味もしないただの水道水に涙が出そうになった。
end
〜おまけ〜
「ドイツさん!サルミアッキ食べました??」
「ああ。だがアレ・・」
「わぁーっ嬉しいなぁ!みんななぜだか食べてくれないんですよ!あんなに美味しいのに・・」
「お、美味しい!?」
「あの味を理解してくれる人が居て本当に嬉しいです^^*」
「い、いやそのな・・」
「そうだ!ドイツさん、お酒好きでしたよね!?サルミアッキ味のウォッカいかがです?ガムとかもあるんですよ!」
「そ、そうなのか・・」
「今度イタリア君の分も一緒にプレゼントしますね!」
「・・・ああ、すまないな」
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