Un romanzo

□ぷにょぷにょの魔力
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前々からやばいとは思っていた。
このまま放っておくと取り返しのつかない事が起きる、そんな気がしていた。
でもまさかこんな早くにその予兆がくるとは思ってもみなかったのだ。




「・・本当に入らないのか?」
「うん・・」


アメリカが片手だけジャケットに手を通したままうなだれて答える。
そのフライトジャケットは彼が会議の時にまで着てくる、いわばアメリカの特徴といっても過言ではないものだ。

そして今、そのジャケットが着れなくなった。



「・・・おいどんぐらい増えた?」
「な、何がだい?」
「しらばっくれるな、体重だ!」
「い、1キロぐらいかな?」
「嘘つけ!この腹で1キロなわけねぇだろ!」



アメリカが観念したようにイギリスの耳元に口を寄せる。
ぽしょりぽしょりと喋ってから決まり悪そうに俯くアメリカ。その隣ではイギリスが驚愕したように目を見開いて動けないでいる。
そうとうの数だったらしい。



「う、そ・・だろ?」
「・・」
「何食ったんだよ!」
「ハンバーガー、かな?」
「最悪・・」



呆れたようにため息をつく。ハンバーガー1個でそんなに太る筈がない。どうせ1日8個ぐらい食べたのだろう。
あれほど食べ過ぎには気をつけろといったのに・・。


Tシャツの上からアメリカの腹をつついてみる。


「っっ!?」


すぐに手を引っ込める。あまりの柔らかさに驚いた。まるでつついた指を飲み込んでしまいそうだった。


不可解そうなアメリカを無視してもう一度おそるおそるその腹に手を伸ばす。

やはりそこは先ほど受けた印象通りに柔らかくそしてくせになってしまいそうな感触だった。



「・・・」
「なんだい?」



黙ってぷにょぷにょと触っていると上から少し不機嫌そうな声がとんでくる。

しかしどうもその柔らかい腹から手を離す気にはなれなかった。
それどころかアメリカがダイエットをしてこの腹の感触が無くなってしまう事が惜しくすらなってきた。

腹から手を手を離さずにアメリカを見上げる。



「あのさジャケット、新しいの買ってやるからさダイエットすんな」
「は?なんでだい?」



意味が判らない、という顔をするアメリカに腹が気持ちいいから、と説明するのははばかられた。

そんなことを言ったらムキになって強行ダイエットにはしるか、エロ大使と言われるのは目に見えている。



「あー、と・・だ、ダイエットは体に悪いらしいしな。無理矢理するのは良くないと思ってな!べ、別に腹の感触にはまったとかでは決して無いからな!」
「えーでも君『最悪・・』とか言ってなかった?」
「そ、そんなことないぞ!どんなお前も最高だ!!」
「そ、そうかい?」
「ああ!!見てるだけで胸がドキドキする!かっこいいぞ!」



満更でもなさそうなアメリカに内心でガッツポーズを取った。これであの素晴らしい感触が奪われることはない!
照れながら自分の腹を触るアメリカにもう一押しする。




「男はそのぐらい逞しいほうがいい!抱かれてぇぐらいだ!」


言ってからはっとする。自分は何を言っているんだ。

アメリカの見ると嬉しげな表情の顔をしている。そしてその目の奥には嬉しそうだけでは片づかないなにかがあった。




「嬉しいぞ、イギリスから誘ってくれるなんて」
「あ、アメリカ、ちょっと待て!」
「逞しい体が好きなんだろ?」
「ぁ、ん・・や!」
「ぞんぶんに堪能してよ」
「ひゃっ!ば、ばかぁぁああ!!」



自分の上に乗っているアメリカと、軽々しい発言をした自分に向けた叫びは自分から発せられる嬌声によってすぐにうち消された。


end

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