Un romanzo
□隣にいるのが当たり前
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先程、扉を蹴破らんばかり入り込んで来たイタリア兄により半ば同棲状態だったイタリアが連れて帰られた。
長期滞在に酷くご立腹らしいイタリア兄を止めるわけにもいかず、珍しく今夜は一人だ。
引きずられながら泣き叫ぶイタリアを思い出し、一人苦笑を零す。
せっかくだから一人の夜を満喫しようと読み掛けの本を持ってベッドの上に倒れ込んだ。
ぺらりとページをめくる。その本は前々から読もう読もうと思っていたものだがイタリアの邪魔のせいで結局冒頭数ページかで止まっていたものだ。
ひそかにずっと読むのを楽しみにしていた。
だというのに全く内容が頭に入ってこない。同じ行を読み返したり、意味が分からなくなって前に戻って読み返す。
イタリアが騒いでいるわけでもなければ全くの静けさの中に紙のこすれる音だけが聞こえる。
(何故集中できん‥‥?)
首を傾げながらも本を読むことを諦め、ヘッドライトを消して瞼を閉じた。
真っ暗な部屋には物音一つせず、外で鳴く蝉の音がとても大きく感じる。
中々眠りにつけず寝返りを打った。そこでふと不思議なことに気がつく。
(なんだ、この空間は‥?)
イタリアが潜り込むからといってダブルベッドにしたドイツのベッド。
今日はそのイタリアがいないのだから堂々と真ん中に寝れば良いのだ。しかしドイツは今、何故かベッドに不自然な空間を空けてはじのほうで寝ている。
「癖、か」
口に出して自嘲する。そう考えると本が頭に入ってこない理由も分かった。
いつの間にか常にイタリアが側にいることに慣れてしまった自分。昔だったら考えられない事だ。
今、スイス領を挟んで隣の家にいるであろうイタリアの事を考える。
(イタリアの奴、ちゃんと風呂に入っただろうか?髪を濡れたまま寝てはいないだろうな?ただでさえ裸で寝るものだから風邪をひきやすいのに本当にあいつは‥)
考えていくうちに段々と寂しいような気持ちになってくる。
(たった数時間前までは近くにいたのに)
イタリアのいない空間に手を伸ばす。ひんやりと冷えたベッドに虚しさを覚える。
『数時間前までは近くにいた』ということは裏を返せばイタリアと離れてから数時間した経っていない、ということだ。
まったく情けない自分にため息を零す。そしてため息と共に淋しさも言葉となって口から零れた。
「イタリア‥」
「うえぇぇぇん!ドーイツーッ!!」
「なっ!!?イ、イタリア!?」
暗い部屋のドアをばんっと開けて聞き慣れた高めの声が抱きついてきた。驚いてヘッドライトをつけるとそこにはやはり予想通りイタリアがいた。
わんわんとドイツの首筋に顔を埋めて泣くイタリアに目を丸くさせながらもその頭を撫でてやる。
一通り泣き終わったのかイタリアが真っ赤にはれた顔を上げた。
「ドイツぅ‥俺、淋しかった‥」
自分の心を読まれたのかと一瞬びっくりしたがすぐに意味を理解して未だ目に溜まっている涙を拭ってやる。
「なんかね、おかしいの。ドイツいないのにパスタにブルスト入れちゃったり、飲むつもりなんてないのにビール開けちゃったりさ。兄ちゃんに怒られちゃった」
へへ‥と恥ずかしげに笑うイタリアの額にキスを落としてやる。
イタリアは突然のキスに少し目を見開き、次いで嬉しそうにヘラリと笑った。
イタリアも同じだったのだ。ドイツにとってのイタリアもイタリアにとってのドイツも常に一緒にいるはずの存在なのだ。
「イタリア、泊まっていくんだろ?布団に入ったらどうだ、風邪ひくぞ」
「勿論!ありがとドイツ!‥あれ?シーツが冷たくて気持ち良い‥?なんで?」
「お前のために空けてたんだ。そこはお前の場所だろう?」
少し気障かな、とも思いながらも笑ってやるとイタリアが「ドイツ大好き!」と言ってドイツの唇にキスをした。
そしてそのまま二人で確かめ合うように抱き合いながら眠りに落ちていった。
end
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