Un romanzo

□当事者は現状に気づかない
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良い香りが鼻腔をくすぐる。
部屋のベッドで寝転んでいたプロイセンはその匂いに気がつき体を起こした。

食欲を誘う甘いお菓子の香り。
決して菓子好きではないがついごくりと唾を飲んでしまう。


(菓子の匂いっつーことは‥)

匂いの元を辿りキッチンに入るとそこには予想通り、エプロンをつけた弟とイタリアが立っていた。
どうやらケーキを作っているらしい。通りで美味しそうな匂いがするわけだ。


一生懸命に調理をしているイタリアに後ろからそろりそろりと近づいていく。


「イーターリーアーちゃんっ」
「うひゃぁ!?」
「オスト?!」


突然抱きつかれたイタリアは驚いて小さく飛び上がった。その拍子に投げ出されたボールをキャッチしてやる。


「プロイセンかーびっくりしたぁ!」
「旨そうなケーキだな!俺の分あるよな?」
「一応あるが、いきなりイタリアに抱きつくな!危ないだろ、イタリア怪我してないか?」
「俺は大丈夫だよー」
「そうか‥今回は無事だったもののオストはもう少し回りに気を使うべきだ」


プロイセンの手に持っていたボールをドイツが取って少し大袈裟にも感じられるため息をこぼした。


(危ないからだけじゃないくせに)

意味ありげにドイツをニヤリと見上げる。その視線をドイツはふんっと鼻で笑った。
場の空気が甘い匂いに反して緊迫したものへ変わる。

未だにプロイセンの腕の中にいるイタリアはそれに気付いていない様子で料理を続けている。


「気を使えっつーならお前こそ、客が来たならちゃんと俺に伝えなきゃじゃねーのかよ」
「イタリアは俺の客だ。いちいちオストに伝える必要は無いだろ」
「生意気言ってんじゃねーぞ、ガキのくせに」
「兄さんに言われたくない」

バチバチと火花を散らしていると不意にプロイセンの腕の中からするりとイタリアが抜け出した。

つい二人とも黙りイタリアに視線を向ける。
ガチャリとトースターを空けてイタリアが中から出来上がったらしいタルトを取り出した。

そして固まってる二人ににっこりと笑いかける。


「出来あがったみたいだし食べよー!」



***




「おっマジに美味い!」
「えへへ〜褒めて褒めてー」


嬉しそうに微笑むイタリア。
彼の作ったケーキはしつこくない甘さに果物の酸味がきいていてとても美味しい。柔らかいスポンジはふわふわとして口の中で溶けてしまいそうだ。


「イタリアちゃんは料理上手だなっ」
「本当に上手いな」
「ありがと〜」


エヘヘ〜とはにかんでケーキを食べているとイタリアの頬にクリームがついた。
それを見つけたプロイセンはにやっと笑って、イタリアに顔を近づけてペロリと舐め取った。


「な、?!」
「お、クリームもなかなか美味い」
「付いてるなら口で言ってよー」

もぉっと頬を膨らませるイタリアにプロイセンは悪い悪い、と形だけ誤って机の向こう側に座るドイツを盗み見た。
ドイツは眉間に皺を寄せ厳しい様子でプロイセンを睨んでいる。その様子にプロイセンがザマーミロと小さく舌を出す。


「・・イタリア、もう少しこっちに寄れ。」
「ヴェ!何で〜?」
「ほら、苺やるから」
「わーい!ドイツ大好きーっ!あーん・・」


椅子をずらしてドイツの方へ体を乗り出しドイツのフォークに刺さっている苺をぱくりと食べる。
心内で舌打ちを打つ。

机の下でイタリアにばれないようにドイツの足を蹴り飛ばす。蹴られたドイツも負けじとプロイセンの足を蹴りつけた。


「オ、オスト散歩にでも行ったらどうだ?いい天気だぞ?」
「何言ってンだよ、超曇りじゃねーか。痛っ!お前こそ夕飯の買い付け行かなくても良いのかよ?」
「こないだ買いだめしたブルストが残ってるから大丈夫だ、それよりオスト顔色悪いぞ。寝てきたらどうだ?」
「ヴェ、ヴェストこそ変な汗かいてるぜ?病院行ってこいよ!」


顔には出さないように机の下で攻防線を繰り広げるドイツとプロイセンには勿論気づかないイタリアは、

(仲良しだなぁ・・)

と見当違いの事を考えながらケーキをせっせと幸せそうに口へ運んでいた。
最後の一口になったケーキを口に運ぼうとフォークを突き刺す。が、刺さったケーキを見つめるだけで一向に食べる気配が無い。

そしておもむろにケーキを二つに分けて片方をフォークに片方をナイフに刺して、未だに喋り続けているドイツとプロイセンの口に押し込んだ。


「「むぐっ!」」
「美味しい?」
「あ、ああ・・」
「良かった、ご馳走さま!」


満足そうに食べた食器を下げるイタリアの後ろ姿にプロイセンとドイツは顔を見合わせ吹き出した。
イタリアはその様子を


(本当に仲良しだな〜)


と思いながら微笑ましい気持ちで見ていた。

end

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