Un romanzo

□扱いの差は気遣いの差
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カリカリカリ‥と部屋にペンを走らす音がする。
薄暗い部屋には頭に白い鉢巻きを巻いた日本が机に向かいなにかを一心不乱に書いていく。


壁にはポスターとともに『締め切りまで後三日!!』と殴り書きで書いてある紙が貼ってある。

限界状態である日本何かをぶつぶつと呟く。




「忙しい忙しい忙しい!!なんでこんなに忙しいんでしょうね!」



嗚呼っ!と頭を押さえながらも右手ではGペンを握り原稿に書き続ける。

着ているジャージは洗っていないのかインクでなんとなく薄汚れている。服装に気を使う日本には珍しい事だ。
黒い大きな目の下には隈ができている。長い睫毛に影が出来て余計に疲労感を漂わせていた。




『ジリリリッジリリリッ』



そんな追い詰められている彼に電話がかかってきた。
電話を一瞥した日本はチッと珍しく舌打ちをうち電話にでる。




「はい、日本です」
「イギリスだ。実はアメリカと喧嘩し‥」
「服脱いでベッドの上で『許してアメリカ、なんでもするから』って言えばすみます」
「なっ?!ちょどうしたんだ日本?!な、なんかおかし‥?」
「いえ、ただ貴方のボサボサ頭と極太眉毛と貴方の恋人のメタボの眼鏡に腕が震えているだけです」
「俺の‥‥?」
「とにかく先ほど言ったことをすれば仲直りでしますよ、はいさようなら」




電話の向こうで止める声が聞こえたが無理矢理電話を切った。
ため息をつきまた原稿に戻る。




『ジリリリッジリリリッ』




またすぐにかかってくる電話にワンギリしてやろうと手に取るとかけて来た相手は眉毛ではなかった。
かけてきた相手の名前をみて驚き電話にでる。




「はい、日本です」
「もしもし日本ー?なんか声疲れてるねー、大丈夫?」
「ええ、珍しいですね電話なんて。いつもアポ無しで遊びに来られるのに」
「ヴェーなんかこの時期日本忙しいみたいだし、邪魔したくなかったから」




そのはにかんだような言い方につい口元が緩む。
まったくこの気遣い。先の阿呆眉毛にも見せてやりたいものだ。




「お気遣い、ありがとうございます。四日後
には暇ができますので是非遊びにきてくださいね」
「うん!楽しみにしてるよ!」
「あのイタリア君、用事は?」
「日本の体調が気になっただけだよ。この間疲れてるみたいだったから」



胸がほわりと温かくなる。
自分の事を考えてくれている彼の事を考えるだけでなんだか力わいてがくるようだ。




「本当にありがとうございます、では」
「うん、四日後ね!ばいばーい」



がちゃりと電話をきった。先よりなんとなくリラックスした体で伸びをしてまた席に戻る。

さっきよりも落ち着いた頭で楽しいであろう四日後の事を考えながら原稿を続けた。


end

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