Un romanzo

□君が忘れられない
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土煙舞う戦場。
剣を片手にずんずんと前に進んでいってしまう彼。


『待ってよ〜』

どんなに走っても追い付けない背中。それどころか距離がどんどん空いていく。


『ねぇ待って!』


どんなに読んでも振り返ってくれない。ダメだ、その先に行っては・・!


『行っちゃダメ!神聖ローマ!!』






ばっと目を覚ます。そこはいつもの自分の寝室だった。

汗だくになったパジャマを床に脱ぎ捨てた。もう一度ベッドに倒れ込む。



(夢・・)


久しぶりに見た、嫌な夢。大事な人が行ってはいけない所に自分を置いていってしまう。

独立前にはよくそんな夢を見て一人、朝まで泣いたものだ。
最近は見ないからそんな夢、すっかり忘れていた。



「神聖ローマ・・」


今は亡き、彼のことを思い出す。何百年たった今でも彼の表情、仕草、声全てを鮮明に覚えている。
一緒に寝たことも、水浴びをしたことも、絵を描いたことも、最後にキスをしてくれたこともおそらく一生忘れることはできない。


いつだって彼は優しかった。恥ずかしがりながらも花をくれたりご飯をくれたり。

彼が戦場に行ってしまってからいつでも帰ってこれるようにハンガリーさんにお菓子の作り方を習った。



「嘘つき」


オーストリアさんに死んだことを告げられた時はすぐには信じられなかった。もう彼に会えないなんて信じたくなかった。
作ったお菓子の香りを嗅ぐたびに空しくなった。

彼を殺した相手を憎んだ。彼を守り抜けなかった騎士達を憎んだ。そして止めることのできなかった自分を一番憎んだ。
どうしてあの時力ずくでも止めなっかたのか。それとも彼について行っていたら彼は居なくならなかったのだろうか。



「ごめんね」



何度も繰り返してきた言葉をつぶやく。


彼の死を経験してから戦う事が怖くなった。一人を殺すだけでどれだけの人が涙を流すんだろう。

そう思うと銃握る手がふるえた。戦場にいる人間がすべて彼に見えた。


(誰かを殺すぐらいならヘタレと罵られた方いい)



「Come per me, ancora non L'e dimenticato」

静かにつぶやいて目を閉じる。
一度覚めってしまった目はなかなか眠りにつくことはできなかった。


end

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