Un romanzo
□見つけてしまったから
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(あ、いた・・)
遠くでドイツ達と喋っているあいつを見つける。いつも通りの青い軍服を着てニコニコと笑っていた。
(可愛い・・な)
成人男性とは思えぬ幼顔に高い耳障りの良い声。楽しげな彼を見るのは密かな俺の楽しみだった。
昔からそれを見ると何となく心が温かくなるのだ。いや、なっていたのだ。
楽しげに笑う彼を見ていられなくなって目をそらす。
(いつからだ?)
その姿を見てなぜだか胸の奥がぎゅっと締め付けられるようになったのは。
(痛え・・)
理由は判らない。ただ分かるのはあいつが自分以外の奴と話しているのが辛い。
胸が締め付けられ、動悸がする。その場から彼だけを連れ去って逃げていきたい衝動に駆られるのだ。
(何だよ、これ)
客観的に見ればこの気持ちの名前は一目瞭然だ。
でもまさか自分に限ってあいつに、イタリアにそんな思いを抱いているなんて事は・・
「あ、イギリスだぁ!おーい」
俺に気がついたイタリアが手を振って駆け寄ってくる。心臓が驚く程に跳ねた。
一歩一歩と近づいてくるたびに心臓の音が大きくなる。
「ぼーっとしてどうしたの?」
「あ、いや・・なんでもねぇよ」
かぁと血が頭に上ってきて頭が働かない。もっと気の利いた事を言おうと思っても喉がからからになって言葉をうまく紡げない。
「あ、さっきアメリカがねハンバーガーをくれたんだ!これこれ」
「か、体に悪ぃからあ、あんま食うなよ!」
「ヴェーでも美味しいよねー」
「ま、まぁな」
(ああ違う!もっとこう・・)
言いたい事が頭のなかでグルグル回ってでてこない。
「おいっイタリア行くぞ!」
「ヴェッ!ちょっと待ってよ〜あ、イギリスバイバイ!」
「え・・」
走り去ろうとするイタリアの腕を無意識に掴んでいた。
(あ、分かった)
この瞬間全てに気づいた。動悸の理由も胸の痛みの理由も。
正直、やっぱりと思った。気づかなかったんじゃなくて分かってた上で答えから目をそらしていたんだ。
振り返ったイタリアが不思議そうな顔をする。すぐに掴んでいた手をぱっと離す。
「どうかした?」
「え、ぁその・・・じゃ、じゃあな!」
「?うんまたね!」
ぶんぶんと手を振るイタリアの背後でドイツと日本が凄い顔でこちらを睨んでいた。
そっち向かって軽く鼻を鳴らしてやる。
(負けねぇ)
もう見つけてしまった。もう引き返せない。
だから・・
(俺が貰う!)
end
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