Un romanzo

□油断は禁物
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遠くから声がする。だんだん近づいてくるそれは聞き慣れた高い声。
今週で何度目だろう?
少し呆れながら声のする方へ向くとやはり予想通りのひとがこちらにむかて走ってきていた。





「ヴェー日本日本ー!」
「・・イタリア君また逃げてきたんですか?」


飛びついてくる彼についため息を零した。本来なら彼はこの時間帯、ドイツさんと一緒に訓練をしている予定だ。
ヴェーヴェーと規制を発してくっつく彼を半ば強引に引き剥がす。



「訓練サボったのばれてまたドイツさんに叱られますよ」
「んーでも俺辛いの嫌だしムキムキにはなりたくないんだよねー」
「・・そうですか」


まったく反省の色を見せないイタリア君に苦笑する。いつものドイツさんの苦労が分かった気がした。
でも確かにドイツさんのしかし確かにドイツさんの訓練はきつい。特にこの老体の身体には響く。若いイタリア君とてこの細い身体ではあの訓練についていくのは難し
いだろう。
その証拠に彼の身体には無数の擦り傷がついている。酷いところは傷から血が出ていた。


「イタリア君、傷から血が・・」
「イタリアァァ!!どこだぁ!!」
「うぉ!ドイツだ!俺逃げるから!日本ばいばい!」



ドイツさんの声を聞いたとたんに私の話を遮り、イタリア君は脱兎のごとく駆けだした。
さすがだてにいつもドイツさんから逃げていないというか、一瞬にしてイタリア君の背中は見えなくなった。

ちょうどイタリア君と入れ違いにドイツさんが息を切らして走ってきた。



「日本っ!イタリアを見なかったか?」
「今、ものすごいスピードであっちに行きましたよ」



イタリア君が走っていた方を指さす。ドイツさんがはぁと疲れたようにため息をつく。


「・・そうか、すまんな」
「あまり虐めないであげてくださいよ」
「なに?」


眉間の皺を深くしていぶかしげにこちらを見つめた。先より目に不穏な光が走っている。


「そう怖い顔をしないで下さい、ただイタリア君はあなたよりも柔いと言うことを分かって欲しいだけです」
「そんなことは知っている」
「これは失礼いたしました。ああ、そうだ」


にこりと微笑みドイツさんに鞄に入っていた絆創膏をつきだした。不思議そうな顔をするドイツさんにそれを渡す。


「イタリア君にどうぞ。消毒してから張ってあげてください」
「っ・・・すまんな・・」


うけっとた絆創膏を不愉快そうにポケットにしまい込むドイツさんに最後に低く耳打ちをした。


「あまり油断してはいけませんよ、まだ誰も諦めていません」
「・・ああ」

眉間に皺を寄せたままイタリア君を探しに走り出すドイツさんの後ろ姿を私はただ笑って見送っていた。


end

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