Un romanzo

□覚悟していただかないと
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「てゆーかよ、あいつは空気が読めなすぎなんだよ」
「はぁ‥」


30分前にも聞かされた文句に内心溜息をつく。
2時間前、アメリカさんと喧嘩したと言って泣きながら家に駆け込んで来たイギリスさん。黙って2時間もの間、文句というかもはや惚気を延々と黙って聞いている自分に拍手を送りたい。



「俺だって悪かったと思ってんのにあんな言い方‥‥」
「そうですね‥」


全く“あんな言い方”しなければこの面倒臭い眉毛が私のところに転がり込んでこなかっただろうに。
きっと今頃一人で反省しているアメリカさんを思い浮かべていい気味に思う。



「小さく頃のアメリカはそれは可愛かったのに‥っ。どこで育て方間違えたんだ‥」
「さぁ‥私にはちょっと‥」



知るわけねーだろ、と心の中でつぶやく。


(てゆーか一々喧嘩のたびうちに押しかけるの辞めてもらえませんかね‥)


確かに最初は楽しかった。
どっからどうみてもすぐ解決しそうな喧嘩に『嫌われたーっ』とか『もう駄目だーっ』と馬鹿みたいに騒ぎ立てる彼らを見ることは年寄りの楽しみでもあった。


(しかしこう頻繁に来られると‥)


面倒臭い、非常に面倒臭いのだ。
悪口の裏には隠しきれない相手への愛が溢れていて、怒ってるように見えて実はただの自己嫌悪。喧嘩という名の愛の確認作業なのだ。


(それはいいとして私を巻き込まないで頂きたいものです‥)


はぁ、とつい溜息を零してしまう。


「くっそーメリカのばかぁ」
「それについては私も大いに賛同です」
「ふぇ?にほん?」


不思議そうにこちらを見上げるイギリスさんを無視してチラリと時計を見る。そろそろいつもの時間だ。

タイミングよくドアがおもいっきり開かれた。



「イギリス!イギリスはいるかい?!」
「アメリカ?!」


家に飛び込んできたのは当然アメリカさん。随分と急いだようで眼鏡はずれてジャンバーは肩からずり落ちている。
驚いて目をぱちくりとしばたかせるイギリスさんをアメリカさんは勢いよく抱きしめた。


「ごめんっ俺が悪かったよ」
「あ、いや‥その、こっちこそ悪かったな」
「イギリスっ大好きだぞ!」
「お、俺も‥」
「仲直りがすんだところで、早々に引き上げていただけますか?私、用事があるんですが‥」
「わっ日本!す、すまなかったな‥いきなり押しかけて」
「いえ」



(何を今更‥悪かったと思うなら部屋片付けて帰れ)


仲良く手を繋いで帰る後ろ姿に軽く毒づきピシリとドアを閉めた。

あちこちに転がった一升瓶を跨ぎ部屋に入る。そして白い鉢巻きをぎゅっと巻き原稿の前に座った。



(まぁここまで迷惑かけられたんだからR18は覚悟していただかないと)

握ったGペンに自然と力が篭った。


end

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