Un romanzo
□間接キス
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いつからだろう?あいつとのキスが恥ずかしくなったのは。
「ロマーッ!仕事で疲れた旦那さんにキスしたってー」
「だ・れ・が旦那さんだ!!気持ちわりぃ!」
飛び付いてくるスペインを引き離す。えーっなんでーっと唇を突き出すスペインを無視して顔を背ける。
別にキスが嫌なわけじゃない、ただ恥ずかしいだけで。
元々そういうのは得意だしスペインとだってちょっと前まで普通にキスをしていた(勿論ただの挨拶のだっ)筈だった。
だというのに最近おかしい。“キス”という単語をスペインから聞くだけで心臓がバックンと跳ねる。馬鹿みたいに恥ずかしい。素面でなんて到底キスできそうにない。
しかも恥ずかしい、と言うことすら恥ずかしいのだ。突然の体調変異に正直俺は戸惑っていた。
「親分淋しいわー‥」
「ベっ別にキスが嫌なわけじゃないぞ!」
「そうなん?ならほらチュー」
「やっ‥ば、馬鹿!離れろチクショー!」
おもいっきり頭を殴ってやった。スペインが頭を押さえてうずくまる。ちょっと罪悪感。
(‥別にキスが嫌なわけじゃないしな、うん)
なんとなく思い付いた事を実践してみる。
スペインの手からトマトを奪い取る。おっ?と顔をあげるスペインの前で俺はトマトにチュッと音を立ててキスをした。スペインにもこのぐらい気軽にキスできたらいいのに。
そんな事を考えながらそのまま自分キスしたところをスペインの口にむちゅっと無理矢理押し付ける。スペインが不思議そうに首を傾げた。
「コレなんなん?」
「か‥‥スだ」
「へ?」
「間接キスだっつってんだろ!二回言わせんなチクショーッ!」
一瞬ポカンとしたかと思うとスペインはニマーッと笑い、すごい勢いで俺に飛び付いて来た。
「ッロマかわええっ!もーっ最高やで!」
「っ離せコノヤロッ!」
「いーやーやー」
「気持ち悪いんだよ!」
うっとおしく抱き着くスペインにばくばくと五月蝿い鼓動。
やっとそこで俺の体調変異は全部をこの馬鹿の責任だと気付いた。
end
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