Un romanzo
□ごめんな
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好きな子が昔の相手を思って泣いていた。
しかも相手の男は自分のよく知る、今は無き主。
小さな体で最期まで戦線で戦い続けたその勇姿は今も尚、自分の脳裏に焼き付いている。
(綺麗、だな)
部屋の片隅でキャンバスを持って静かに泣くイタリアちゃんはなんともはかなげだった。
そして窓からの光につつまれたその姿は聖母のような神聖なもののように思われた。しかしそれはどこら影を孕んでいて危うい。
小さな主から最期に渡されたキャンバスを渡した。ボロボロになったそれには小さなイタリアちゃんの絵が描かれていた。
彼からいつも聞いていた、一目惚れした召し使いの少女の事を。いつも恥ずかしげにしかし誇らしそうに話していた。
(ドジで食いしん坊で泣き虫だけど絵と歌と料理がうまくて優しくて、すごく可愛い)
のろける彼をよくからかっては怒らせていた。
彼が死んでからその娘にあった。その娘は少女ではなく少年だったわけだがきっと性別を知っても彼の恋心にあまり関係なかっただろう。
そして関わるうちにだんだん自分も引き込まれていって、今ではもうこの有様だ。
泣いているイタリアちゃんに何をしていいのか、わからなかった。
自分の大事な人でもある彼を思って泣いてくれていて、それはつまり自分以外の男のために泣いているわけで。
ぎゅっと手を握る。泣いては欲しくなかった。彼もきっとそういうに違いない。でも‥
(ただの俺の我が儘かも)
泣いては欲しくない。でもそれはイタリアちゃんが自分じゃない相手のために泣いてるから。
(泣くな、なんて)
言えない。言える訳、無い。彼のために、なんて言った途端に嘘になる。
情けない自分にほとほと愛想がつきる。
「‥ごめんな」
泣いているイタリアちゃんにただそれだけ言って俺はその場にたったまま動かなかった。
end
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