Un romanzo

□Bon Anniversaire
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パーティーというのは始まってしまえばドンチャンと騒いで飲み、楽しいものであるが始まる前というものはそれを越える苦労と手間があるものだ。
それを今、自らの体で痛感する。

バタバタと会場の右から左へと走り回り、装飾をしたかと思えば料理を並べなくてはいけない。




(ああーめんどくせぇっ!!)



何故誕生日を祝われるはずの自分がこんなに大変な思いをしなくてはならないのか。考えると腹が立ってくる。



『ピーンポーン』

まるで俺の機嫌を逆なでするかのようにタイミングよくなったチャイム。
ちっと品のない舌打ちをしてドアを開ける。そこには日本が立っていた、宅配便の格好をして。



「‥何してんだ?」
「お荷物を届けに来ました」
「はぁ?お前日本だろ?」
「日本じゃありません、宅配便のお兄さんです」



そういって差し出された、というか押し出された荷物は台車に乗っていて何が入っているんだ、と思うほどに大きかった。


「何これ?」
「さぁ?私はしがないただの宅配便のお兄さんなんで」
「‥あっそ」
「ああそうだ、それ割れ物なので気をつけて下さい。後、なまものなので今日中に“お食べ下さい”」
「割れ物でなまもの?」
「では失礼します」



ガチャリと音を立ててドアがしまった。
台車にのったでかい段ボールを見る。差出人は書いてなく、ただ『HAPPY BIRTHDAY』と書きなぐってあるだけだ。


(何入ってんだ?)


開けようと手をのばすとふと、時計が目に入った。驚いてばっと立ち上がる。


「やっべぇ準備しねぇと!」
「え、開けないの?!」
「は?!」
「あ゛」


今、確かに段ボールから声がした。しかも聞いたことのある、高めの透き通った声。



「‥イタリア?」
「ヴェー‥ばれちゃった‥」


段ボールの蓋が自然と開き、中から頭に大きなリボンをつけ、オーストリアの家で着ていたのよりも可愛いスカートをはいたイタリアがでてきた。

段ボールから人が、しかも好きな人が女装してでてくるなんて‥全く事情が飲み込めない俺にイタリアはニッコリ微笑んだ。


「『誕生日おめでとうフランス兄ちゃん!プレゼントは俺でいいよね?』」
「勿論!!っじゃなくて何なんだ一体?!」
「驚いたー?あのね日本に兄ちゃんの誕生日プレゼントを相談したらこうしたら喜びますよって」
「あー成る程ね、だから“今日中にお食べ下さい”か」
「??」


クスクスと笑う俺を不思議そうに見つめるイタリア。
その首を傾げる姿にキュンときて抱きしめる。


「ヴェ!?兄ちゃん!?」
「お前は俺のプレゼントなんだよな?」
「う、うん‥」
「じゃあどうしようと俺の勝手なわけだ」
「え、ちょ兄ちゃん!?」


怪しげな言葉にさすがに慌だすイタリアの唇を素早く奪う。


「言われた通り美味しく頂いてやるよ」
「ぁ、ちょ‥んゃ、やーっ!」



「まぁそれは後にしましょうか?」
「「日本!?」」



日本がイタリアに覆いかぶさる俺をべりっと引きはがす。

いつものような和服を身に纏っている。どうやら宅配便の服は着替えたらしい。



「自分でけしかけといてソレ?」
「フランスさんの事を考えてのことです。もうすぐ皆さんいらっしゃいますよ、ドイツさんとかロシアさんとかも」
「あ、サンキュー」



命を救ってくれた日本に礼をいいぱっぱと服をはらい立ち上がる。そして日本の腕の中に納まっている俺のプレゼントに低く耳打ちした。


「“今日”はまだ長いぜ?」
「ヴェ!?」


真っ赤になるイタリアを置いて俺はまたパーティーの準備に取り掛かった。


end

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