Una novela

□甘えればいい
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今日は俺にしては珍しく一日中忙しい予定だった。午前はデスクワーク、午後は会議とげんなりしていた。
しかし午後の会議が偉い人の風邪とかで無くなり、晴れて俺は午後が暇になったのだ。

勿論俺はその休みを謳歌するべくドイツの家に遊びに行くことにした。



「ドイツー?いるー?」


ドアを開けて呼んでみるが返事がない。不思議に思って勝手に上がり込む。
リビングにもドイツはいなかった。どうやら今は留守らしい。わざわざスイス領を通って来たというのにとんだ無駄足だ。

リビングのソファーにぼすりと座り込む。


「つまんなーい‥」


まぁアポなしで訪れるほうが悪いのだが‥
ふとソファーにドイツの黒いシャツがかかっているのが目に入った。
手を伸ばして引き寄せる。どうやら脱いだやつらしい。何となくよれよれしている。


「おっきい‥」


広げると自分の服の二倍ほどあるようにみえる。
同い年でここまで違うものだろうか?体格の違いは自覚していたが流石にここまで見せ付けられると傷つく。


「むーっ」


ドイツのシャツと睨めっこをしていると不意に風がふいた。シャツが顔にかかる。


「あっ」


息を吸い込んだ時、ドイツの匂いがした。ミントみたいなすっきりとした匂い。
急に淋しくなってドイツのシャツに顔を埋めた。


「ドイツ‥」


無論、返事など帰ってこない。宙ぶらりんになった自分の言葉に余計に淋しくなる。
ドイツのいないドイツの家はなんだかまるで知らないところのようだ。


「ドイツ、ドイツ、ドイツ‥」


何度名前を呼ぼうと同じなことぐらいわかってる。
別に一生会えないわけじゃないし、昨日だって会ってる。


(なのになんでこんな淋しいんだろ‥)



「会いたいよ、ドイツ‥」


「目の前にいるじゃないか」

「ヴェ!??ド、ドイツ!?いたの?!」


突然声をかけられ勢いよく顔を上げるとソファーの後ろにドイツが立っていた。全く気がつかなかった。


「まぁ俺の家だしな、いるんじゃないか普通」
「俺留守だとばっかり‥い、何時からいたの?」
「俺がベランダの掃除を終えてリビングに入ったらお前がシャツに顔を埋めてたところだった」
「ヴェー言ってよ〜!」


自分の行動を思い出して頬が熱くなる。ああ一体何やってたんだろう‥

ほてった頬を冷やそうとパタパタ仰いでいるといきなり唇にドイツにちゅっというリップ音をたててキスをされた。


「‥え?」
「その‥会いたかったんだろ?今目の前にいるんだから、存分に甘えればいい」
「〜〜ドイツ大好きーっ!」
「こ、こらイタリアっ!!」


俺はドイツにおもいっきり抱き着いた。抱き着いたドイツからはミントの爽やかな匂いがした。


end


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