Una novela

□指輪
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ショーウィンドウに飾ってあるのを一目見て気に入って絶対にイタリアに似合うと確信した。
値段など見ずに何のためらいも無くそれを持ってレジに向かった。が、よく考えればこれどうやってイタリアに渡せばいいんだ?






「ヴェードイツーっ」
「っイタリア、急に飛び付くな。危ないだろう」


はーいっ、と元気よく手を上げるイタリアにため息がさがる。昨日も同じやり取りをしなかったか?



「ところで隊長!今日は何のようでありますか?」
「っう、うむ‥そのだな‥」
「?」



つい口ごもってしまった。国民性とはいえなんとも情けないものだ。波打つ心臓を落ち着けようと息を吸う。

ポケットの中のそれを指で確認する。四角いそれを指で弄ぶ。
中のものに触れた一瞬ヴァレンチーノを思い出して怯んだ。大丈夫だ、あの時とは違う。何せ俺達は今、恋人同士なのだ。



「これを渡そうと思ってな‥」
「えっ、」


意を決し、それを掴んだ手をポケットから取り出した。イタリアの前に差し出した手が少し震えている。



「これって‥指、輪?」
「‥ああ」


イタリアは驚いたように目を丸くさせ、俺の手の上のケースをゆっくりと受け取った。イタリアがパコリと音を立てて蓋を開ける。

中に入っていたのは銀の薔薇の細工の施してある指輪。所々にダイヤがちりばめられている。



「お前に‥似合うと思って」
「‥‥‥」
「い、嫌だったか?そしたらすぐに代えに‥」


何も言わないイタリアに不安を覚える。俯いているイタリアの表情はここからだと確認できない。
慌てる俺にイタリアは首を横にふった。


「ううん違うの‥‥俺、嬉しくて‥」
「イタリア?」
「ごめっ、泣く気は無かったんだけど‥」
「‥イタリア、顔を上げろ」
「ちょっと待って‥俺、今見せらんない‥」


俺はなかなか顔を上げようとしないイタリアの手から指輪のケースを取り上げる。
あ、と指輪につられて顔を上げるイタリアの瞳は涙でうっすら濡れていた。

イタリアの目の前でケースから指輪を抜き取る。ダイヤに光が反射し、キラリとひかった。
俺は目を擦っているイタリアの左手を優しく取りその薬指に指輪を滑らすように嵌めた。そしてその細く白い手にキスを落とす。イタリアの息を詰める気配がした。



「予想通りよく似合っている」
「っ‥ドイツの気障!俺恥ずかし‥っ」
「‥いつでも付けてろ、俺の証だ」


少し照れ臭くてそっぽをむく。イタリアの真っ赤な顔が上下するのが目の端でとらえた。

end

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