Una novela

□トラウマを乗り越えて
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それは何気ない日常会話からだった。


「そういえばアメリカとイギリスが結婚したらしいな」
「えぇ、やっとという感じですよね」


ふぅ、と息をはき湯飲みを置く日本。見た目は若い日本だがそういう姿が似合うのはやはり長い混沌とした年月を生き抜いた貫禄だろうか。


今日は日本の家で会議があるということでドイツは日本と二人で茶を飲んでいた。何故会議を始めずこんな会話をしているのかというと――




「イタリア君、来ませんね‥」
「全く本当にあいつは‥スマンな日本」
「いえドイツさんが謝ることではありませんよ」



優しく微笑む日本にもう一度すまないと謝り、いつまで経っても遅刻癖が治らない恋人を思い出してため息をついた。
ふと、日本が何かを思い付いたように口を開く。



「ところでドイツさん達はいつ結婚なさるんです?」
「っぶ!!ッゲホ、エホッ」



思いもよらない言葉につい飲んでいた日本茶を噴き出す。




「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。で何の話だったか?」
「ドイツさん達の結婚の話です」
「‥何故そうなる?」
「いえ、そろそろお二人も結婚される時期かなと思いまして」



どうなんです?と尋ねる日本に慌てて答える。



「お、俺達は男同士だしな。あまりそういうことは考えていない」
「バレンティーノのトラウマ、ですか?」
「な、なぜそれを知っている?!」



はっと口を押さえるが既に遅い。間髪いれずに当てられつい本当だと自白してしまった。日本がしてやったりという顔をする。



「ハンガリーさんから伺いました」
「ちっハンガリーめ余計なことを‥」
「しかしドイツさん、それではイタリア君が可哀相です。きっと不安ですよ」
「イタリアが、不安?」




はい、と頷く日本を訝しげに見つめる。



「イタリア君はきっとドイツさんがそう言ってくれるのを待ってますよ。バレンティーノの件は貴方とイタリア君は付き合っていないのですから」
「し、しかし‥」


口ごもるドイツに日本は追い撃ちをかけるように続ける。



「男同士だから、というのも言い訳になりませんよ。アメリカさんは兄弟と壁も男同士という壁も壊して結婚されました」
「う゛っ」
「それにイタリア君は知ってのとおりフランスさんやプロイセンさん、スペインさんにロマーノさんなど各方面から狙われているわけです、ボヤボヤしてると盗られてしまいますよ?」
「確かに‥」
「だいたい手を出しておいて結婚しないなど男として失格ではありませんか?!」
「そ、その通りだ」



力説したせいでいつのまちか立ち上がりはぁはぁと息が荒い日本は「これは失礼」とまた座布団に座り直す。
ドイツは目から鱗が落ちたような状態だった。気付かぬうちにイタリアを不安にしていたかもしれないと思うと胸が軋む。



「‥日本、今日俺はイタリアにプロポーズする」
「頑張って下さい、応援します」


ファイトッとガッツポーヅを作る日本にドイツは深く頷く。

陰で日本がネタ帳に一部始終を書き取っていたことにプロポーズの事で頭がいっぱいのドイツは気付かなかったのだった。



数日後、大きなチャペルで白いウエディングドレスを着たイタリアとスーツを着たドイツが結婚の誓いをするのはまた別の話。


end

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