Una novela

□ひまわり
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小さい頃から向日葵が好きだった。黄色くて大きな花。

温かいところに咲いて元気なそれは僕には程遠くて、手を伸ばすことすらおこがましいと思った。




「おはようっロシア!」
「おはようイタリア君」



ニッコリと微笑み僕の前を通り過ぎていく君。


明るい紅茶色の髪が鼻をかすめる。
つい、引き止めそうになってしまう。背中に伸ばしかけた手をぎゅっと握る。



(遠いなぁ)



向こうで談笑する君はあまりにも遠くて眩しくて。

虚しさに心臓がスギリと疼く。

眩しくて胸が苦しいのに一生懸命に話す君から目が離せない。

いっそ君を捕まえて繋いでしまえば‥。
そこまで考えてかぶりをふる。それでは意味がない。



向日葵が欲しくてむやみやたらに暴れたこともあった。結局何も手に入らなかったけど。



(君も無理かな‥?)



苦しい。僕のものにならないなんて、そんなの嫌。
お願いだから‥



(あ‥)



目があった。バッチリと。

振り向いた君は俺が見ていたのに驚いたように目を開き、次いで微笑んだ。そしてすぐ会話に戻る。


たった一瞬。たった一瞬だけ目があった。
ただそれだけ。



(なのにどうして‥っ)



こんなに胸が張り裂けそうなの?

ばくばくと五月蝿い胸を押さえ、僕はその場を走り去った。




意味がない、ハッピーエンドなんてありえない恋なのは分かってる。
それでも‥


(君が愛おしい‥)


end

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