Una novela

□恋人みたい
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(かわいーなー)

手元の写真に写る愛おしい彼。紅茶色の髪を揺らしこっちに微笑んでいる。


(ヴェストから奪ったかいがあった‥)


ヴェストに会いに来る彼に思いを寄せるようになったのは何時からだろう?
声に、仕草に、表情に、馬鹿みたいにいちいち喜び、落ち込み、ときめいた。

握った写真に目をやる。写真の彼が笑いかけているのは俺ではなく、ヴェスト。きっと二人でどこかに遊びに行ったときの写真だろう。


(‥ずりーよなぁ)


俺だってイタリアちゃんと遊びに行きたい。ただきっかけが無いだけで。



(きっかけさえあれば俺だって‥)
「何しとんの、プロイセン」
「うぁおっ?!スッ、スペイン!?」


いきなり声をかけられ椅子から転げ落ちそうになる。
びっくりした‥
そういやここ、世界会議場だったんだっけか‥すっかり忘れていた‥


「いきなり話し掛けんなよ」
「すまんなぁ、なんや一人でぶつくさ言っとったから。ん?何持ってん?」
「あっいやこれは‥」


咄嗟に背後に隠す。流石にばれたら恥ずかしい。

あたふたと一生懸命スペインに弁明をしていると後ろからスッと写真が抜き取られる。


「おっこれイタリアじゃねーか、どーしたんだよコレ」
「あっフランス返せよ!!」


フランスが俺から抜き取った写真をニヨニヨとスペインに見せる。
ほんまやぁとか言ってスペインまでにやけだす始末。
写真をこんなとこで眺めていた馬鹿な自分が殴りたくなった。


「てめぇ早く返‥」
「イタリアー!ちょっとこっち来いよー!」
「ぎゃー―!!フランス、お前どうゆうつもりだよ!!」


遠くで日本達と話していたイタリアちゃんがフランスに呼ばれ近づいてくる。
やばいやばい!これじゃ俺が変態みてーじゃねぇか!!


「何、何?兄ちゃんどうかしたの?」
「プロイセンがお前の写真見てニヤニヤしてたぜ」
「わーわーわー!ちょてめっいい加減な事言うな馬鹿っ」


にやつきながらイタリアちゃんに告げ口するフランスをおもっいきり突き飛ばす。
ありえねぇ!!普通マジで言うか?!


「嘘!嘘、嘘だから!」
「ほんまやで、ほらコレ写真」
「ヴェ俺だぁ」
「うわあぁ!ス、スペイン何やってんだぁ!」


すぐにイタリアちゃんの手に渡された写真を引ったくる。
これじゃストーカーだと思われるだろうがぁ!!

恐る恐るイタリアちゃんの顔を覗く。
嫌な顔されてたり泣いてたりしたらどうしよう‥?そしたら俺、多分後10世紀は立ち直れ無い。


「あの‥イタリアちゃん‥?」
「なんか照れるー!俺写真写り悪いんだよねぇ」


頬に手を当てて恥ずかしがるイタリアちゃん。気持ち悪がられて‥ない‥?

フランスもスペインもイタリアちゃんの意外な行動に呆気にとられている。
俺達が動かないでいるとイタリアちゃんはなにかを思い付いたように手を打った。


「あっそうだ!俺だけ写真もたれてるのは恥ずかしいからプロイセンも俺に写真頂戴よ!」
「俺の、写真?」
「うんっだめ?」
「いや俺は全然いいけど‥」
「わーいっ」


なんかいいねーこーゆーの、って笑ってるイタリアちゃんに俺は赤面した。
イタリアちゃんが俺の写真持って、俺がイタリアちゃんの写真持つってことはつまり写真の持ち合いっこってことでそれってなんか‥



「恋人同士みたい‥」



「恋人?」
「あっいや!なんでも‥」
「じゃあ今からプロイセンん家言って写真を吟味しに行こー!」



俺の手を持って走り出すイタリアちゃんの手の温もりに俺は心の中でフランス達に舌を出した。


(ざまーみろばーか!!)


背後で二人の悔しがる声が聞こえた気がした。


end


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