novel

□狂うぐらいに愛してる
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(赤い‥)


独特の鉄っぽい臭いが鼻つき眉間にシワが寄る。爪の間にも入り込んだ血液が不快だ。いつになってもこの臭いにはなじめない。


(早く手洗お)


汚れていないほうの手で服についた汚れを払い立ち上がると背後から声がした。


「アメリカ‥お前」


イギリスの少し震えた声。

(‥‥とうとう見られちゃったか)


緑の瞳には恐怖が浮かんでいた。
振り返り真っ青なイギリスに優しく微笑んでみる。


「いつもねコレで我慢してるんだ」


俺の足元に転がる黒い物体をさす。
黒い毛が血で濡れている。イギリスの息を飲んだ。


「これね、俺ん家で飼ってたた猫なんだ。俺にすごく懐いてて、君も見たことあるだろ?名前、覚えてる?」
「‥アー‥サー」


掠れたその返答に頷く。イギリスはただ動かない黒いそれを見つめている。


「目が緑で細かったからね、君にそっくりだった」
「‥なんで殺した?」
「憎いから」


君がね、と笑う。
イギリスは拳をにぎりしめ動かない。あーあ我慢しちゃって。本当は俺のこと殴りたいぐらい怒ってるだろ?


「君がいけないんだよ、イギリス。
君は綺麗すぎる、ずるいよね。悪いこといっぱいしてるくせに」

「‥‥っ‥」

「君といるとね俺苦しいんだ、お前は汚い、お前は汚いって言われてるみたいでさ」
「‥‥‥」

「でも君と一緒にいたかった、楽しかったし愛していた」

「じゃあなんでっ」

「限界だったんだんだ、君と居たいけどいると辛い」

「だからって‥」

「じゃあどうしたらいい?」


挑発的に笑ってみせる。
イギリスは相変わらず俯いたまま。
つまんないな、俺はイギリスの泣いてる顔好きなのに。ゆっくり彼に近づく。


「俺と一緒に死んでくれるの?」

「‥‥」

「ほらね、だから俺はこうするしかなかったのさ。」

「‥‥」

「ねぇ俺を殺してよイギリス、その綺麗な白い手で。できないんなら――」


君を殺させて?そう続く前に俺の唇をイギリスが奪う。
口内に入り込んでくるイギリスの舌に答える。イギリスの前歯を優しくなぞり舌を絡ませる。
角度を変え何度も真剣なキスをした。

何分たったかわからないけどイギリスから唇を離した。
目を上げるとイギリスの視線にぶつかる。
緑の大きな瞳。吸い込まれそうになる。

イギリスがゆっくり口を開いた。


「いいぜ、一緒に死のう」
「‥‥ほんとに?」
「ああ。愛してる、アメリカ」
「俺も狂うぐらい愛してるよイギリス」
「‥‥ばーか」


俺が心のそこから愛した人はそう言って恥ずかしげに笑った。


end

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