novel

□できれば愛の共同作業
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「フランス兄ちゃーんいるー?」


閑静な住宅街に大声が響き渡る。


(誰だよ‥たまの休日ぐらい休ませなさいっての)


眉間にシワを寄せ読んでいた本を置く。
部屋の窓から顔をだすと塀の向こうに紅茶色の髪と特徴的なくせっ毛が見えた。
心臓がトクンと波打つ。

急いで玄関へ向かう。途中鏡の前で立ち止まり髪のチェックをする。

鏡の中の少しテンパりながらも嬉しそうな自分についため息がさがる。


(‥なんか俺必死なのね‥)


一人の弟分にペースを乱されたいる自分、なんとも格好悪い‥。


「兄ちゃーん!いないのぉ?」
「いますいますっと!Bonjour、イタリア」
「Boun giorno!フランス兄ちゃん!いないかと思ってびっくりしたよ」
「お兄さんだって年柄年中家で暇してるわけじゃないよ‥まぁいいわ、上がれよ」
「しつれーしまーす」


イタリアは慣れたようにフランスの家へと上がり込むと、真っ直ぐリビングへと向かう。


「ヴェー相変わらず部屋綺麗だねー」
「まぁな、まだまだガキなお前とは違うって事」
「ひどーっ俺の部屋意外と綺麗だよ」
「ほぉそーかそーか、まっとにかくその辺座れよ」


明らかに信じてないフランスにイタリアは頬を膨らましながらもすせめられるままにソファーに腰を下ろす。

フランスは紅茶の入ったカップを二つ持ってくると片方をイタリアに渡した。
口を付けると甘い柑橘系の匂いがする。



「ありがとう、兄ちゃん」
「んで今日はお兄さんに何の用?」
「ヴェ?これといって用事はないけど」
「はぁ?」


持っていたカップを落としそうになった。


(おいおい冗談でしょ‥)


お世辞にも仲がいいとは言えない間からだというのに捕まえられるとか捕虜にされるとか考えないのだろうか?
それとも兄貴分としてそれだけ信用されてるのかも。

ここは注意すべきなのかしないべきか‥


(無防備すぎるというか馬鹿というか‥いやそこもまた可愛いんだけども‥でも危ないよな‥
けどな捕虜で縛られてるイタリアもそそる‥
じゃなくて、でも信用されてんだったらすげー嬉しい‥)



いやいや‥と首を振りながら考え込むフランスを尻目に
イタリアは何かを思い付いたように立ち上がった。


「あっ強いていうならお昼食べに来た!ちょうど12時だし」
「ちょイタリ‥」
「久しぶりに二人で作ろうよ!」


ねっ共同作業!なんて言って微笑まれたら断れるわけもなく、
握られた手に引かれキッチンに連れ込まれた。

握られた手にドキマギしている間抜けな自分に本日二度めのため息。




(‥するなら愛の共同作業がいいんだけどなぁ‥)


end


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