novel

□俺は神に祈ろう
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部屋のドアをおもいっきり開けた。バンッと大きな音がしたが今の俺にはそんな事どうでもいい。
部屋の執務机に座わり目を丸くしているヴェネチアーノに近づき衿を掴み上げる。

「・・っ!?」
「ヴェネチアーノ!枢軸側についたってどういう事だ!?」
「っ兄ちゃん‥」

何かに堪えるような顔をして俯いていたヴェネチアーノに俺は声を荒げてまくし立てた。


「連合が勝つに決まってる戦争にどうして枢軸側についた!?俺が連合側にいることを知っててやったのか!?」
「‥‥‥」
「なんか言えよ!!」

机を叩く。何枚かの書類がヒラヒラと床に落ちる。
俺が連合にいるのだってお前のためだった。
お前に辛い思いをさせないようにわざわざ強い方に屈したのに。

俺はいつだってヴェネチアーノの事を一番に考えて来た。
大好きな弟が笑っていられるように、辛い思いをしないように頑張ってきた。
なのにお前はいつだって無意識に俺の気持ちを踏みにじる。


胸が痛い。息が苦しい。頭に血が上って酸欠になりそうだ。
ヴェネチアーノは俯いたままなにも言わない。



「なんでだ!?枢軸にいたらきっと痛くて辛いぞ‥?それに俺とも敵同士になる、それも分かってお前は‥‥」


声が掠れ、涙で視界が霞んでくる。苦しくてしゃがんで机に突っ伏した。

「お前はっ!俺よりあいつらをとるのかよ?!俺はお前のためにいつだって‥」

悔しさと虚しさでそのまま泣いていると不意に頭の上から声が降って来た。
ヴェネチアーノの優しくて少し高い声。


「勝手な事してごめんなさい‥」
「‥‥‥」
「でもね兄ちゃん、俺後悔はしてないよ」
「っ‥‥」
「別に兄ちゃんよりドイツ達の方が大切ってわけじゃない‥」

だから顔をあげてよ、と慰めるようにいわれて言われたようにゆっくり顔を上げてみるとヴェネチアーノの瞳にぶつかった。
綺麗な紅茶色の大きな瞳。いつも以上に真剣なその視線に射抜かれる。


「俺はドイツと日本と一緒に戦いたいんだ、二人の力になりたい。
ドイツと日本は、初めて出来た大切な友達なんだ‥」

もし戦争に負けることになってもね、と笑うヴェネチアーノに何とも言えない気持ちになった。



「‥‥そんなにあいつらが大切か?」
「‥うん」
「自分がどうなっても良いほど?」
「うん」
「‥そうか‥、じゃあ‥仕方ないな」
「え?」

驚いた顔をするヴェネチアーノを前に立ち上がる。
そして柔らかい髪をクシャリと撫で優しく笑いかけた。
枢軸で戦う事をお前が望んだのなら‥


「頑張れよヴェネチアーノ」
「‥‥うん‥‥ふぇ‥」
「泣くなよ馬鹿弟」
「兄ちゃぁん」

泣いてしまったヴェネチアーノをため息を零してから抱き寄せる。

「俺・・兄ちゃんと戦いたくないよぉ」
「うん」
「戦争で怪我するのもやだぁ‥」
「うん」
「でも役に立ちたいんだ、二人のために何かしたい‥」
「ああ」


大好きな俺の弟。
今は敵同士だけどまたいつか一緒にいられるようになることを俺は神に祈るよ。


「愛してる、ヴェネチアーノ。辛くなったらいつでも来いよ」
「ありがとう兄ちゃん」



end


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