novel
□責任、とってもらいます
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陽射しの暖かな気持ちの良い午後。
やわらかな陽にあたりながら日本は縁側でゆっくりお茶を啜っていた。
(平和、ですね‥)
風が頬をなでて心地良い。
そのまま風に身を任していると何かが聞こえた気がした。耳を澄ますしていると遠くから自分の名を呼ぶ声が聞こえる。
「ヴェーにほーん!」
(‥ああ、彼ですか)
どんどん近づいてくる声は聞き覚えのある、その澄んだ優しい声につい口元が綻んでしまう。
その声の持ち主は日本の座っている縁側まで駆け寄ると彼に抱き着いた。
「日本!遊びに来たよ!!」
「こんにちはイタリア君どうぞ上がってください」
「ヴェーありがと!俺日本ん家好きだー」
「それはありがとうございます」
イタリアを家に入れると日本は菓子と茶を取りに台所へ行った。居間ではイタリアが楽しそうに日本のゲームをしている。
(どんなお菓子がいいですかね?)
ごそごそと棚を漁りながら彼のことを考える。
(基本はなんでも食べるようですが‥)
彼の食べ物を食べてるときの幸せそうな顔を思い出し、自然と笑顔になってしまう。
彼が喜びそうなお菓子とジュースを持ち、居間に戻るとイタリアは床に転がり気持ち良さそうに寝ていた。
時計をみるとちょうど3時、“シエスタ”の時間だ。無駄とは知りつつも一応声をかけておく。
「イタリアくーん、そんな所で寝ていると風邪を引いてしまいますよ?」
「‥ヴェ‥‥」
よだれをたらし寝息を立てて寝ている姿に少し飽きれ半ば、可愛いと思ってしまうのは歳のせいだろうか?
日本はため息をつきながら近くにあった布団をイタリアにかけてやる。
「あなたは本当に無防備ですね‥心配ですよ‥」
顔にかかった髪を耳にかけてやると急に手を掴まれる。
驚いてイタリアをみやるが彼はまだ夢の中のようだ。しかし手はしっかり握られていてなかなか取れそうにない。
「これは困りました‥」
とは言ってみるものの、これといってやらなきゃいけないこともない日本の顔は心なしか楽しげだ。
空いてるもう片方の手で髪を優しく撫でる。
(それにしても綺麗な髪ですね‥とても柔らかい)
(肌も白くて柔らかい、女性みたいです)
(腕も体も華奢すぎです、日頃訓練を逃げ出したりするから‥)
そのまま寝ているイタリアを眺めていると床の寝心地が悪かったのか、イタリアがむにゃむにゃと目を擦った。
ぱっと頭に置いていた手をあわてて離す。ずっと見ていたのがどうにも決まりが悪い。
「あっお、おはようございますイタリア君っ」
「‥に‥ほん‥?」
「なっな、なんですか?!」
「日本の手、冷たくて気持ちのいーね‥」
「えっ?えっは?あっあぁそれはどうも‥///」
咄嗟の事に顔を赤くして返事をする日本を不思議そうにイタリアが顔を覗き込む。
イタリアの綺麗な紅茶色の瞳が目のなかに飛び込んでくる。
「‥‥っ?!//」
「どうしたの日本?」
「い、いや何でもないですっはい!あっちょっとお茶!お茶入れてきますっ」
その場から逃げるようにして居間をでていく。バクバクと心臓が破裂しそうに痛い。
(すごく‥胸が痛いです‥)
“萌え”とは違う、もっと酸っぱくて痛くて甘いキモチ。
「こんなの‥初めてですよ‥」
この素敵で残酷なキモチ、きっとこれは‥
「‥‥恋ですか」
「日本ー?」
居間から愛する彼の声がする。
「‥責任、取ってもらいますからね」
end
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