novel

□愛に溺れる
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扉を開けると酒の臭いがした。

鼻をさすような臭いにアメリカは眉を寄せる。

リビングに入るとベロンベロンに酔ったイギリスがソファーの上酒瓶に囲まれ膝を抱えて丸まっていた。
ざっと見ただけで随分な量の酒を飲んだらしい。鼻水混じりの鳴咽が湿っぽい部屋に溶けていく。

「‥ひっぐ‥うぅ‥アメリカの馬鹿ぁ‥」

鳴咽にまぎれた罵倒は約束をすっぽかしたアメリカにたいするもの。
本来今日は一日中デートのはずだった。
ずっと忙しくて会えない中やっととった念願の休み。
イギリスは今日を胸を膨らませて待っていた。
しかし突然入ったアメリカの仕事の電話にその予定は無残にも崩された。
文句を言うイギリスにアメリカは


“ほんとにごめん!すぐ帰ってくるから!”


それだけ言って振り返ることもせずに走って仕事場に向かった。


そして急ピッチで仕事を終わらせたアメリカがイギリスの家に訪れると案の定、
彼はアメリカへの怒りを酒に向けていた。


「‥ぐすっ‥アメリカァ‥」
「なんだい、イギリス?」
「ふぇっ?!ちょっおまっいつから!」


アメリカが後ろから優しく答えてやると驚いたように涙で腫れた顔を隠す。
アメリカはボスッとイギリスの隣に腰を下ろす。

「今日はごめん‥折角のデートだったのに」
「‥‥別に」

意地っ張りな恋人にため息を零しアメリカは以前として顔を伏せているイギリスの肩を自分のほうに寄せる。
イギリスの肩が驚いたようにびくっと反応した。
そのままイギリスの柔らかい髪を梳く。
金色の細い髪がさらさらと指をぬけていく。

「イギリス、ホントにごめんね」
「‥‥寂しかった」
「ごめん」
「ムカついた」
「うん」
「腹も立ったし辛かったし悔しかった」
「そうだよね」
「あと‥すげー不安になった」
「‥」
「俺のこと好きじゃないんじゃないかとか、迷惑なんじゃないかとか、」
「君はほんとにネガティブだな」
「うるせーよ馬鹿」

ゴシゴシと袖で涙を拭うイギリスをそのまま抱きしめる。
イギリスは黙ってアメリカの背中に手を回した。
どうやら今回の罪は許されたらしい。


「イギリス、愛してるから」
「ん‥俺も」



(愛に溺れる、)
end

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