novel

□スコーンに愛を込めて
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広い部屋にため息が何度めかの零れる。
キッチンの椅子に座りながら俺は目の前の真っ黒なスコーンと睨めっこしていた。

(なんでうまくいかないんだ?)

部屋には焦げた臭いと煙が充満していて、
窓を開けてみてもなかなかそれは消えてくれない。

(こんだけ作ってんだから
一度ぐらい成功してみていいもんなのにな‥)

黒く焦げた苦いスコーンを一つつまみ、
かじってみるがどうにも思ったような味にはならない。

「こんなんじゃ食わせてやれねーな‥」

ふーっと息を吐きスコーンを捨てに立ち上がろうとすると、
不意に後ろから腕が伸びてきて皿の上のスコーンを掴んだ。

「うわっまた失敗したのかい?」
「あっアル?!どっから入った?!」
「開けっ放しのドアから入ったんだよ。
君ちょっと無用心なんじゃない?」
「余計なお世話だ、ばかぁ!」

ポコポコと怒りながらドアを閉めて戻ってくると、
アメリカが捨てようとしていたスコーンを食べていた。

「あっおい!!」
「うわマズッ!!苦いよこれ!
お菓子の味じゃ無いぞ!」
「勝手に食うんじゃねぇよっ!!
てかまずいとか言うな、ばかぁ!」

ポカポカとアメリカを叩いていると目に涙が溜まって来た。
不本意ながら溢れてくる涙を隠そうと顔を反らそうとすると、アメリカがぐいっと無理矢理俺の顔を持ち上げた。

「‥君、泣いてるの?」
「!!なっうるせぇよ!」

ぐしぐしと乱暴に袖で涙を拭うと優しく額にキスをされた。

「‥へっ?」
「ごめんね?君が俺のために作ってくれてたのは知ってたんだけど、
あんまりにも君が可愛いから虐めたくなっちゃって‥」

ごめん‥と耳元で低く囁かれて俺はビクッと反応してまう。
そんな俺を抱きしめながらアメリカはスコーンをもう一口かじる。

「ちょ‥アル?」
「やっぱり苦くてまずい‥」

うっ!と言葉に詰まり、
また目頭が熱くなりかける。
その様子を見てアメリカは優しそうに俺の頭を撫でた。

「けど君が作ったんならなんだっておいしいよ」
「なっ何いって?!///」

チュッと優しくキスをされてスコーンに合う紅茶がほしいな、
と言われた俺は真っ赤な顔を見られる前に走ってキッチンに向かった。

end


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