novel

□あなたもどうか幸せに
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「いーねー。イギリスは」
「は?いきなりなんだよ、気持ちわりーな‥」
「いやさー」


眉間に皺がよる。

隣に座るフランスは憂うようにため息を零した。
やっと進み始めた会議を無視しフランスは話し始める。
ったく欝陶しい‥。



「お前って結局好きな相手と結ばれたじゃん?それが羨ましーなって」
「はぁ?!な、何いって」
「だってお前アメリカと付き合ってるでしょ?」


会議を進めるアメリカを親指でクイクイと指してまたはぁとため息をつくフランス。

いきなり何なんだよ?!
真っ赤になりながらも悔しくてフランスを睨め付ける。


「だっだったらなんだよ?!」
「いやーなんでもないワ、片思いは辛いのよって話」


珍しいぐらい淋しげな瞳。
その視線の先にはよだれを垂らして爆睡しているイタリアがいた。


「‥お前、イタリアの事‥」
「ん?気付いてなかった?お兄さん、ずぅっとよ。何百年もずーっと‥」


真剣に愛し続けてる、そういうとフランスは目をつむり頬杖をついた。

さすがにフランスがイタリアの事を好きな事は知っていたが迂闊にも少し同情、してしまった。

片思いしていた頃の俺と重なりすぎて。

だからつい、髭を慰めるなんて珍しいことをした。



「なんか‥らしくないな」
「は?」


頬杖をついたままフランスが目だけをこちらに向ける。

長い前髪でできた陰が余計に悲壮感を醸し出す。


「お前って積極的というか‥欲望に素直っていうか何て言うんだ?‥うーん‥」
「‥‥」


言いたい言葉が出てこない。
元気付けてやりたいのに何も言ってやれない。


「何て言うか言ってやればいいと思う、
いつもお前がやってるみたいに。
なんつーか‥言わないと、なんも始まんねぇから‥だから、えーと‥あ゛〜くそっ」


ダメな自分が情けなくて恥ずかしくて堪らなく机に突っ伏した。
言いたい事がまとまらない。

助けてやりたいという思いばかりが募ってく。


俺が悶々としていると不意に頭をクシャリと撫でられた。
顔を上げ目をやるとフランスのいつものむかつく笑い顔が飛び込んだ。



「サンキューな、イギリス!
何となく救われた。なんとなーくだけどね」
「なっ!折角励ましてやったのにそれか?!」
「さっきのはお前の体験談からか?」
「っ!!//」
「おーおー、お兄さん妬いちゃうなー」



さっきまでの表情とはうって変わりニヨニヨと茶化してくるフランスに顔面パンチを食らわせる。
あー励まして損したっ!

ため息をついてから反対に座りまだ寝ているイタリアを見る。

ふと周りを見渡すとイタリアを見ているやつらは結構いた。
しかもなんとなく視線が熱い。


(ドイツにプロイセンにフランスにスペイン、中国にロシアにロマーノか‥。
こいつのなにがそんなに夢中にさせるんだか‥)


よだれの池を作り気持ち良さ気に寝息をたてているイタリア。

そんな魔性の力があるようには見えない、
いかにも純粋そうな顔だ。



(イタリアは誰を選ぶんだろうな‥?)


誰を選んでほしいというのはないけれど自分みたいに一生愛せる相手を見つけてほしい。


まあみなイタリアを幸せにしてくれそうだ
が。
ふと顔を上げると司会をしているアメリカと目があった。
ニッコリ微笑まれつい突っ伏してしまう。



(‥“自分みたいに”って俺もずいぶん‥)



大事な友が良い相手を見つけられますように、
俺の小さな祈りはまたうるさくなり始めた会議の雑音に掻き消された。

end

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