Um romance

□だってしょうがない
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「ヴェストー先に風呂入るぞー」


返事が無いことからおそらく聞こえていないのだろうが、気にせずに服を脱ぎ始める。
もし、間違って入って来てしまったとしても弟に見られて困る裸など、持った覚えは無い。

服を脱ぎ終わるとその肌寒さに急いでバスルームの扉に手をかけた。



「‥‥え?」
「あれ?プロイセン?」


湯気が落ち着いて見えて来たその景色に目を見張った。
湯舟に浸かっていたのは紛れも無くイタリアで。


「今日プロイセンいたんだー。ドイツが何も言わないからてっきりいないんだと思ってたよ」


ヴェーと笑うイタリアについ、相づちを打つことすら忘れていた。
プロイセンの視線はイタリアの頬に張り付いた濡れた髪やほてった赤い頬、勿論のように全裸のその姿に注がれていた。

なんで風呂にいるんだとか、いつ家に来たんだとか色々な疑問があったがそれどころではなかった。
やばい、何がって息子が。



「ごめんねープロイセンに黙ってお風呂借りちゃって」
「い、いやいい!俺こそ悪かったな!い、今でてくから!ゆっくりどうぞ!」
「いいじゃん一緒に入ろうよ!冷えちゃうよ」
「っ!」



湯舟から立ち上がったイタリアに抱きつかれ、息がつまった。
頭に血が上り、目眩がする。

暖まったイタリアの体温と濡れた肌の感触にぱくぱくと口を開閉させるだけで発声できていないプロイセンを余所にイタリアはプロイセンを浴槽に引き込む。
ちゃぽんと湯に浸かりながらイタリアが気持ちよさげに息を吐いた。


「ふー気持ちいいー・・俺お風呂に入るの好きなんだー」



風呂は嫌いじゃなかった。しかしこの状況下で風呂を楽しめるほどの余裕はプロイセンにはなかった。

狭い浴槽の中で必然的に触れ合う肌。まだお湯の色が白色でよかった。
自分の我慢のきかない息子については今の所気にしなくてもよい。

しかし今、本当にやばいのは息子ではなく自分自身の理性。ぎりぎりの所で保っている理性はイタリアが動くたびにじりじりと削れていく。



「やっぱ、俺でるわ‥!」
「え、」



そう言ってイタリアに背を向け、彼から逃げるように浴槽から出る。

その時、がらりと扉が開いた。開けたではなく、開いた。そう、勝手に。
行き場の無くなった手が扉の前に立ち尽くす弟の姿にびきんと固まる。


「あ、ドイツ待ってたよー」
「オスト‥?なんで風呂に‥」
「げ、ヴェスト‥」


さっと顔が青くなったのが自分でも分かった。

それに気付いたのかドイツが訝しそうな表情で俺をみた。
そして、



「ッオストオオォォォ!!!!」


バスルームの中にドイツの怒りの叫びがこだました。


end
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