Um romance

□Wait
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(やっと終わった‥)


凝った肩を回しながら息を吐く。5時間以上酷使した肩はぎちぎちに固まっている。

これほどの量の仕事は実に久しぶりだ。
目の前に山積みになっている出来上がった書類に満足しつつ、窓の外の暗さにため息をついた。



(さすがに‥帰ったよな‥)



考えまいとしていた事が脳裏に浮かび、ぶんぶんと頭をふる。
時計を見ると待ち会わせていた時間は3時間も前にとっくに過ぎている。

しょうがない、仕事だったのだから。
こんな遅くまで待っていてくれるほど、あいつも暇じゃないだろうし。
別に待っていてほしかった訳でもないしな。

頭の中でぐるぐると言い訳と自分に対する慰めの言葉を考えながら椅子の背もたれに掛かったコートと鞄を持って部屋をでた。


しんとした人気の無い廊下につい、心細いような気持ちになる。

別にあいつが自分を待っていない事は分かっていた。
でももしかしたら何か奇跡的な事が起きて「遅いじゃないか」なんて憎まれ口をたたきながらドアの前で待ってくれてるのではなんて・・


「遅いじゃないか」
「え・・?」


後ろからした声に不覚にも間抜けな声がでた。
振り向くと体育座りをしながらシェイクを片手にハンバーガーをむさぼるアメリカ。
そんな、だって3時間もすぎたのに、なんでこんなところに。


「なんで・・?」
「なんでって失敬だな!イギリスを待っていたんじゃないか」
「嘘・・」
「嘘って君ねぇ・・」


呆れたような顔をして立ち上がるアメリカについ涙腺がゆるむ。

待っていてくれた、3時間も、こんな人気の無いところで、俺を。

その事実が嬉しくて愛おしくて。
ああ、いつもならこんな事しないけれど。今は人もいないし、夜遅くだし、奇跡がおきたんだし、少しぐらい。


「い、イギリス!?」
「・・こっち向くなよ」


ジャンバーを正すアメリカの背中にぎゅっと抱きついた。
触れたアメリカの手の冷たさに少し驚く。

こんなに冷たくなるまで、俺のことを待っていてくれたのか。
そう思うと本当に体がむずがゆいような愛おしさが溢れてくる。


「アメリカ」
「なっ、なんだい?」
「・・ありがとう、んで大好きだ」
「イギリス!?」


素っ頓狂な声をあげて振り返るアメリカから逃げるように廊下をすたこらと進む。

今、顔を見られるわけにはいかない。
見られたら、死ねる。余裕で。




「ちょっとイギリス待ってくれよ!」
「うっるせ!ばかぁ!!」


追いかけてくるアメリカから逃げるように廊下を全力疾走した。


(廊下は走っちゃ駄目なんだぞ)
(うるせーな知ってるよ)
(イギリス顔真っ赤なんだぞ)
(走ったからだばか!)

end
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