Um romance

□幸せにありがとう
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実ることのない恋に、一生捕われ続けるのだと思っていた。

それは苦しくて辛いけど、まぁそれもいいかと諦めていた。
だってどんなに苦しくてもそれはやっぱり恋だったから。






「ありがとう」


後ろから抱き着いて耳元でそっと囁いた。
不思議そうに肩越しにこちらを除くドイツから顔を隠すように彼の背に顔を押し付ける。
ありがとうだなんて今更だとは思うけど。どうしてもお前に言いたかったんだ。



ずっとずっとあの恋に捕われ続けるのだと思っていた。小さい頃にした、切ない初恋。
不器用で恥ずかしがりなあの子にした恋は彼の死により終わりを告げた。

好きだと言って去っていた彼を裏切る事など出来るわけがない。
一生、この世にはいないあの子を苦しみながら想い続けるのだと、思っていたのに。




「イタリア?」



訝しげに、しかしどこか心配したようなドイツの声に涙腺が緩む。


厳しくて迫力満点のくせにどこか優しいその声に恋をした。

初めて林であったとき、あまりにあの子に似ていて目を疑った。

同盟国になってたくさんドイツを知っていって、たくさんドイツに助けられて。
気付いたら、好きになっていた。なんども戸惑い否定し考えたけどそれは紛れも無く恋で。



大好きだ。あらためて思う。本当に大好き。

厳しいところも真面目なところも恥ずかしがりなところもちょっとSなところもすごく優しいところも全部、全部好き。



首に回した腕にぎゅっと力を入れる。
ふわっと香ったミントの匂いに頬にあたるちょっと固い髪。そしてドイツの体温。

好きな人がここにいるという実感。そこはかとなく幸せだと感じる。




「ね、ドイツ」
「なんだ?」

「俺にもう一度恋をさせてくれて、ありがとう」



お前のおかげで今俺はすごく幸せだよ、そう言って微笑んでやると照れたような怒ったような声でそうか、と返される。

ふいっと顔は背けられて表情は見えないけどきっとすごく真っ赤なんだろう。
見てみたい気もするけど、今こっちを見られるのは困る。

だって俺もきっとドイツに負けず劣らず真っ赤だろうから。





(ごめんね、神聖ローマ。でも俺は今とっても幸せだよ)


end
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