Um romance

□どうしてくれよう
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ああ神様、願わくばこの穢きった心臓をえぐりぬいてください





「プロイセン」


夕焼けの光を孕んだブラウンの髪を風に舞わせて振り返るイタリアちゃんについ、涙が零れそうになる。
俺の名前を呼んだイタリアちゃんの声が紫色の空に消えていく。




イタリアちゃんを好きになってはいけない。
そんな事は分かっている。よく分かっているんだ。
イタリアちゃんは大事な弟の、ヴェストの想い人だ。
まわりが敵だらけという中で育ってきたせいか、生真面目な堅物に育ってしまったヴェストが初めて身内以外で親愛を向けた相手。
その親愛がすぐに恋愛に変わったことは自分にも容易に感じとれた。

奥手で照れやなヴェストの恋はなかなか進展を見せなくて、それにどこか安心している自分にも腹がたった。

ヴェストの恋を応援するかたわら、同盟国という間柄の彼等がいつも一緒にいるようになったのを見てその様子にちくりと痛む胸。


(俺のほうが先に出会ったのに)

(お前なんてまだまだ若造のくせに)

(俺のほうがずっと長くイタリアちゃんのこと‥‥)



兄として弟に抱いてはいけない汚い感情が渦巻く胸。

忘れようとしても、無視しようとしても余計に溢れる嫉妬という汚い醜い感情。


ああなんだってこんな気持ち。くそ、最悪だ。
ヴェストが大事な弟でさえなければ。
イタリアちゃんを、好きにさえなければ。




「ヴェー、早く帰ろーよー」


てってっと近づいて俺の手に触れるイタリアちゃんの指。
その白くて長い指に心臓が情けないほどに跳ね上がる。指から伝わるイタリアちゃんの体温に顔がかあぁっと熱くなった。
ああどうしよう。好きだ、大好きだ、愛している。


この気持ちが無くなるなんて、ありえない。気づかないふりなんて不可能だ。

でも、ヴェストの恋を応援したい、というかしなくてはいけないという気持ちもある。



ああ、本当に早鐘をうつこの憎たらしい心臓よ!
お前をどうしてくれようか!!

end
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