Um romance

□そんなことだろうと思った
1ページ/2ページ


「‥‥‥」


穴が空くほど見つめられるとは正にこのことだ。
先程から注がれる視線になんとも言えない気持ちになる。


ちらりと向こうと窺い知るとやはり依然としてこちらを見つめる二つの茶色の瞳にぶつかる。
いつもと比べやけに真剣なその眼差しについ、目をそらす。


ああ一体何なんだ。

俺か?俺を見てるのか?
なんか変なのか?おかしいか?
髪が跳ねてんのか?いや、でもイタリアちゃんに会う前にしっかり20分ブラッシングしたし。

それともかっこいいからか?見とれてんのか?俺様に?
そうかそれだ。成る程、それなら有り得る。
イタリアちゃん、言ってくれればいいのに。何も無言で見つめなくても。



もう一度イタリアちゃんを伺う。

ああそう考えれば視線が熱っぽいような気もしないでもない。




「な、なぁイタリアちゃん」
「んー?」
「何、見てんだ?」



その途端、イタリアちゃんの白い頬がぱっと真っ赤にそまり真剣だった表情は困ったようなものにかわる。
そんなに照れなくったって良いのに。

まぁそりゃかっこいい俺様に見とれていたのがばれたのは恥ずかしいには違いないだろうが。
でも実をいえば見られていた俺だって恥ずかしい。



「ヴェープロイセン、俺が見てたの気付いてたのー?」
「まぁあんだけ見られれば、な」
「恥ずかし〜」



頬に手を当てて照れるイタリアちゃん。その姿はなんというか、とても可愛い。
さすが、色んな男達を(無意識に)骨抜きにしているだけある。

(そんな子に見とれられて、俺様ってば幸せも‥)


「ばれてたならいうけど、その鳥触らせてくれない?」
「‥は?」



恥ずかしげにそういうイタリアちゃんに目が点になる。
照れるイタリアちゃんは先程とかわらずやはり飛び切りに可愛い。いや、そんなことよりだ。

触りたい?鳥に?頭の上のか?ちょっと待て。
今の台詞から察するにイタリアちゃんが見ていたのは俺じゃなくて鳥、なんじゃ‥



「昔からずーっと気になってて‥でも今更言いにくくてさ」
「‥鳥?」
「鳥」
「見てたのも鳥?」
「鳥」



ああ、そういう感じか。だよな、なんかこんな良い感じに行くのはおかしいと思ったんだ。
うん、予想できてたぜ。こうなることぐらい。



「で、プー触っていい?」
「‥おう」


頭から鳥をおろしてイタリアちゃんの掌においてやる。
わぁっとはしゃぐイタリアちゃんを余所に、俺は静かに虚しさと悔しさを噛み締めた。


end
NEXT→あとがき
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ