Um romance
□結婚記念日たる日B
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「ただいま」
「お、おかえり!」
普段通り、玄関で帰宅したアメリカを少し上擦ってしまった声で出迎えた。差し出される鞄とコートを受け取る。
そして意味深な微笑みを浮かべる唇にいつの間にか日課になってしまったおかえりのキスを渋々といった形で落とす。
バクバクと緊張と羞恥に早鐘を打つ心臓を悟られぬようにすぐに唇を離した。
ここまでは予定通りだ。
大丈夫、何度もシュミレーションしたはずだ。失敗など、有り得ない。
今日という日のためにどれほど前から計画を練ったと思っているんだ。気付かれないように深呼吸をしてから口を開く。
「な、なぁアメ」
「ねぇイギリス」
「へ?」
「今日何の日か、知ってる?」
はぁ?と阿呆のように口を開けてしまった。
今日が何の日かだと?知らないわけがないじゃないか。
今日を何週間前から数えてきたと思っているんだ。自室のカレンダーについた×の数は手足の指を合わせても足りないだろう。
だいたいその台詞は自分が言おうとした言葉、そのまんまだ。
「‥知ってるに決まってんだろ」
照れ臭くて俯きがちに呟く。
アメリカも結婚記念日を覚えていたとは。少し意外だった。そうか覚えていたのか。その事実がすごく嬉しい。
彼の中の自分の大きさが確かな気がして胸がほわほわとする。
ああ、こんな事を考えている場合じゃない。そうだ、計画を実行しなくては。
「あ、あのさ俺‥」
「イギリス」
「わっ‥」
皆を言う前に体をアメリカの長い腕に搦め捕られた。いきなりのアメリカの行動に息を詰まらせる。
「いきなりなにすんだ!」
「俺と結婚してくれてありがとう」
「っ」
「君といられて俺はすっごく今幸せだぞ」
ああくそ、なんなんだ今の。全部、全部持って行かれた。
こうやって礼を言うのは俺で今の自分のように真っ赤になるのはアメリカの筈だったのに。ちくしょう。
「イギリス、愛してるよ」
本当にずるい。お前ばかり、余裕だなんて。今
の俺は膝も砕けて、アメリカに支えられて立っているのがやっとなのに。きっと耳どころか首まで真っ赤になってしまってるだろうというのに。
そのうえ俺の計画台なしにしやがって。くそ、なんなんだお前は本当に。
腹が立つ。むかつく。何にってそりゃアメリカにもだけど、今泣きそうなほどに喜んでいる自分に1番腹が立つ。
だから、ささやかながら仕返しをしてやることにした。
「あめりか‥」
「ん?」
「俺も今、最高に幸せだ」
「っ‥!」
「俺に、プロポーズしてくれて‥そのあ、ありがとう、
俺もあ、愛してる‥」
「っイギリス!!」
回された腕にぎゅっと力が入り、唇ムチューっとキスをされた。
頬を温かい涙が伝う。
本当に、アメリカと結婚できて俺は幸せだ。
end
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