Um romance

□あなたの特別
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キスをするたびに思う。
この人は今まで何人の人とキスをしてきたのだろう、と。




「イーターリーア」
「なーに?兄ちゃん」


俺を抱えるように後ろから腕を回してくるフランス兄ちゃんに小さく笑って答えた。
柔らかい金の髪が頬に当たってくすぐったい。

くすりと笑って兄ちゃんに寄り掛かる。


「イタリアちゅー」
「んー」


見上げるように兄ちゃんと唇を合わせる。柔らかい兄ちゃんの唇についうっとりと目を閉じた。
ちゅうと啄むように唇を吸われん、と声を漏れる。
甘く、居心地の良い空気があたりに満ちる。いつまでもこの瞬間が続けばいいのにとまで感じる。

それにしても触れるだけのキスだというのに何故こんなにも雰囲気を作られるのだろう。


「ん、イタリア可愛い」
「‥にーちゃんってさ、今まで何人の人と付き合ってきたの?」
「はぁ?いきなりどうしたのよ?」


よく考えてみなくてもフランス兄ちゃんはどこらかしこで人を口説いては身ぐるみを剥がし、どっからどうみても生粋のたらしだ。
俺と付き合うようになってからはそういうことは減ったけれど。でもつまり兄ちゃんはそーゆー経験が豊富だということで。



「ねー何人ぐらいー?」
「んーどうだったかねぇ‥」
「ふーん数えらんないぐらいなんだぁ‥へーそーなんだー」
「いやっ!違くて!‥うーん、人数ったってなぁ‥」



困ったように頭をかく兄ちゃんに頬を膨らましてみせる。

もちろん俺だって女の子大好きだしいっぱいキスだってしたことあるけど。
でもフランス兄ちゃんが俺のしらない女の人と付き合っていたと思うと胸が締め付けられるような気になる。自分勝手だなぁとは自分でも思うんだけど。





「付き合った子は‥そーねぇ、1人ぐらい?」
「う、嘘でしょ!?」
「なんか俺って一日で終わっちまんだよな、恋人とかは基本いなかったわ」
「本当に?」
「本当に」
「そう、なんだ」



どうしよう、どうしよう、もの凄く嬉しい!心臓の音が耳元で聞こえる。

兄ちゃんの何千年という歴史の中で彼の恋人は俺を含めて二人だけ。
つまり俺は兄ちゃんの人生の中でも特別ってことで。ああそれってなんて、幸せなことなんだ!



「フランス兄ちゃん」
「んー」
「いっちばん大好きだよ」


今、心に溢れる言葉を口にするとフランス兄ちゃんはいつもの余裕の表情を崩して、はにかんだように笑った。

end
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