Um romance

□頼むから
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ビュンビュンと気持ち良い風が耳元を過ぎていく。
その風がほのかに潮の匂いをかぐわせ、海が近いことを知らせる。



「プロイセーン海の匂いがするよー」



振り落とされないよう背中にしがみつくイタリアが他の音に負けぬように声を張り上げる。

イタリアの声を遮るエンジンの五月蝿いモーター音にしっかり整備をしておけばよかったと後悔をする。

とはいえ、何十年も使っていないバイクでイタリアとドライブをするということも行き当たりばったりに決めた事なわけで。
せめて見た目だけでもと錆び付いたボディを塗り替えただけでも立派なものだと思う。




「イタリアちゃん寒くねぇか?」
「大丈夫ープロイセンにくっついてるから」



腰にまわった手にギュッと力が入った事につい顔がにやける。

バイクに二人乗りという条件下、必然的にプロイセンとイタリアは0距離になり先から胸は壊れたように早鐘を打っている。
そのうえ、イタリアの体はバクバクと煩い心臓にぴっとりとくっていている訳なのだから心臓の音がばれてしまうのではと気が気でない。




「プロイセンどうかした?」
「あ、いやなんでもねぇよ!確かにくっついてっと暖かいな」



イタリアて触れ合っている部分だけがやけに暖かい。もちろん、それがイタリアの体温のおかげだけではないことぐらい理解している。
イタリアとくっついていない耳や頬も熱いのがそれのなによりの証拠だ。



「遭難したら抱き合えっていうけどなんだか真実味あんな」
「そうだねーあっじゃあ寒くなったらいっぱいくっつけばいいんだ!」
「ぶっ!!」



衝撃の発言につい、ハンドルが滑る。
ぎゅんと音を立て、タイヤが滑り大きく蛇行した。きゃっ!と後ろのイタリアが小さく叫ぶ。



「うぉっごめ!イタリアちゃん大丈夫か!?」
「ヴェー吃驚したよ!」



ぷーっと頬を膨らましながら上目遣いをするイタリアにまたもやバイクは大きく蛇行。


「やー!ちょ、プロイセン!前!前見て!」
「ごめ、ちょイタリアちゃん今のもう一回やっt」
「いいから前見てえぇぇぇ!!」


真っ青な空にイタリアの切実な叫びとついでにプロイセンの鼻血が舞った。


end
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