Un roman

□なんというはた迷惑
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「イタリアと喧嘩した?」
「‥ああ」


がっくりと肩を落とすドイツに紅茶の注がれたカップを差し出す。白い湯気を立たせ香り高いそれはわざわざイギリスから取り寄せた王室御用達だ。

そのカップを礼すら言わずに無言で受け取りグビグビと飲み干す。礼儀も作法もへったくれもない。
真面目なドイツにしては極めて珍しいその行動に彼の落ち込み具合がよくわかる。


「珍しいですね、あなたたち二人が喧嘩するなんて」
「‥ああ」


先の返事と全く変わらない二字を返すドイツにため息が漏れる。
喧嘩一つでよくこんなにも落ち込めるものだと感心してしまう。
アメリカとイギリスなの二人などほぼ毎日のように喧嘩をしているというのに。いや、滅多に喧嘩をしないからか。


「何が原因なんです?」
「・・今回に関しては俺が悪いんだ」


ドイツが話した喧嘩の原因をまとめると
『イタリアが大事にしていた戦歴(おつきあいした女性の)を誤って捨ててしまったドイツをイタリアが珍しく本気で怒り、ドイツもそれに対し謝らずに意地を張ってしまった』
らしい。
ドイツとつき合ってきながら戦歴などとっておくイタリアもイタリアだがそんなことで意地を張ったドイツもドイツだ。
とどのつまりどちらも悪い。



「ウジウジしていないで謝って来たら如何です?」
「その‥それが、な‥」
「なんです?さっさとお言いなさい」
「じ、実は出ていくときに勢いに任せてだな別れる、といってしまって‥」
「‥お馬鹿さん」



くだらない。実にくだらない話だ。イタリアがドイツを愛していることは明白でドイツがイタリアを愛していることも当然の事実。
場所も時間も気にせずにいたるところで迷惑なほどにイチャイチャと騒いでいる二人(しかも無意識なのが達が悪い)は誰がどうみても相思相愛、バカップルだ。

たかが喧嘩ごときで引き裂けるような間柄ではないのだ、この二人は。


「まぁとっとと謝れば話はすみますよ」
「そ、そうだろうか?」
「当然です」



それでもぐちぐちと何かを言っているドイツにため息をつき紅茶に口を付ける。
さすがは紅茶(だけ)が取り柄のイギリスから取り寄せただけ在って香りも味もいい。
これを一気飲みするとはドイツも馬鹿なことをしたものだ。


「お馬鹿さん、くだらない意地をはっていると他のお馬鹿さんに盗られてしまいますよ?」
「っ!?」
「たとえばプロイセンやフランスや・・私とか、です」
「な!」
「冗談です。しかし早く行った方が宜しいのでは?」
「っち」


床を蹴るように立ち上がり早足でドアを出ていく。
その余裕の無い姿に小さく苦笑を漏らす。そんなに慌てるなら最初から意地などはらなければいいものを。




(おや?)


ふっと窓の外に目をやると見慣れた明るいブラウンの髪。
少し驚いてから、くすりと笑ってしまう。

本当に彼らはどこまで相思相愛なら気が済むのだろう?




「ドイツ!!」
「イタリア!?どうしてここに・・」
「ごめんねぇ!!ドイツの気持ちも考えずに俺・・」
「いや、俺もその悪かった。お前の大事な物を勝手に捨ててしまって・・」
「いいよあんなもの!」
「その、だからもう一度俺と・・」
「ドイツ大好き!」


窓の向こうのやりとりにため息を零しながらも、唇は気づかぬうちに自然と笑みをかたどっていた。
少し冷めてきた紅茶に口をつける。温かくなくともやはり紅茶は美味しかった。



(本当にお馬鹿さんたちですね・・)


end

〜おまけ〜

「オーストリアさーん」
「こ、こら引っ張るな!」
「イタリア、もっと慎ましやかにお出でなさい」
「ヴェッ!ごめんなさーい」
「仲直りはできたみたいですね」
「はいっ!ねっドイツ?」
「う、うむ・・」
「もう俺ドイツ無しでなんて生きていけないよ〜もう別れるなんて言わないでね?」
「あ、当たり前だ!俺だってお前がいなくては・・その・・調子がでない」
「じゃあ俺達お互いにいなくちゃ困っちゃうね!」
「そう、だな」
「ヴェーなんか嬉しいなぁドイツには俺が必要だって」
「・・また逆もしかり、だろう?」
「えへへードイツ大好きっ!」
「俺もだ」
「・・私がいること忘れないで頂けますか?」
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