Un roman

□舌も声も息すらも
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「でさフランス兄ちゃんが」


25回。今日のこの20分という短い時間に自分以外のに者の名がイタリアの口から出た回数。
20分に25回ということは少なくとも一分に一回は確実に誰か、しかも自分ではない他の奴の名を口にしている、ということだ。


(ムカつく‥)


いらつくあまり持っていたティーカップを叩きつけるように机に置いた。
しかしイタリアはそれにも気がつかないようで夢中に話を進める。

イタリアに会えないこと一ヶ月。やっと会えたというのに何故自分は延々と興味もない他の者の話等を聞かなくてはいけないのだ。

一ヶ月、一ヶ月だ。24時間ある一日を31日も挟んだ再会。
夢を見すぎと笑われるかもしれないが今日は一日中イタリアと愛を確かめ合おうと思っていたのに。


「でドイツが日本とさ」

(‥27回目)


腹が立つ。
もちろんイギリスの気持ちに気がつかずにしゃべり続けるイタリアもだが、彼の口からでてくる者達に腹が立つ。

八つ当たりなことは理解している。
でもイタリアの形のよい唇が楽しげに自分以外の誰かの名を出すたびそいつを呼び出しぶん殴ってやりたい衝動にかられるのだ。
腹が煮え繰り返るような、とはまさにこのことで体の奥底から湧き上がる怒りは止まることをしらない。


「その後にアメリ」
「イタリア」
「え?」


また他の奴の人間の名を紡ごうとした唇を身を乗り出して自らの口で塞ぐ。
舌を搦め捕り、息すらつかせるつもりはない。舌も息も声さえも逃しはしない。全てを飲み下してやりたい。

世界一、といわれる技術を駆使してイタリアを翻弄する。


「ん、んんっ!」


息が苦しくなったのかイタリアにどんどんと背中を叩かれ仕方なしに唇を離す。
見下ろしたイタリア息も上がりきり、頬は真っ赤に蒸気していた。


「い、いきなり何するの?!」
「27回だ」
「へ?27?」
「27回、俺は我慢したんだ。おまえも27回、いや28回は俺に付き合うべきだよな?」


にやりと片頬を上げて笑って見せると蒼白になるイタリアの表情。



「あと27回だな」
「い、意味わからな‥んむっ」


イタリアに他の人間の事を考えさせるような余裕、与えるつもりは当然の如く微塵もなかった。

end
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