Un roman
□隠し味は愛
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周知の事実だがイタリアはパスタが好きだ。
それはもう生命力の源と言って良いほどだと思う。
水の無い砂漠でパスタは作るは会議中に何の脈絡も無く「パスター」と叫ぶは、とにかく痛い兄とってパスタは無くてはならない物らしい。
「確かにうまいが・・」
「どうかした?俺のパスタ不味い?」
怪訝な表情でパスタをつつく俺を不安げな表情で見つめるイタリアに慌てて首をふる。
不味いなんてとんでもない。
流石イタリアというかイタリアの作ったパスタはとても旨い。
イタリアの作ったパスタを一度口にしてしまうとはかのレストランやなんかでパスタを食べてもなんだか物足りなく感じてしまう。
しかも俺好みに味や材料を調節してくれるものだからもう本当に美味しいのだ。
「いや、いつも通りとびきり美味しいぞ」
「そっかー良かったぁ」
しかも美味しいというと花がほころぶように微笑むのだから食べるほうとしては堪らない。
しかし改めて不思議だ。何故こんなに旨いのだろう?
よくイタリアと一緒に台所に立つことはあるがとくにこれといった隠し味やテクニックがあるようすもなく、普通のゆで方に普通の調理方法だった。
材料とてその辺の店で買った物で高い物を使っている訳でもない。
だというのに自分や他の者が使ったパスタとは一枚も二枚も違った味。
「お前の使ったパスタはどうしてこんなにも旨いんだ?」
「えへへーそんなに美味しい?」
「ああ、お前のパスタがこの世で一番旨いんじゃないか?」
「ドイツ褒めすぎー!俺は特にこれといった隠し味とかないなぁ」
「では何でだ?」
「うーん・・しいていうなら愛かなぁ?」
「愛?」
思っても見なかった言葉につい持っていたフォークを置く。
「愛」とは感情であって調味料の名ではない。感情ひとつで料理の味が変わるんだろうか?
考えていた事が顔に出ていたのか目が合うとイタリアがにっこりと優しく微笑んだ。
「あのね食べてくれる相手の事と大好きなパスタが美味しくできあがりますようにって思って作るんだー」
「お前は本当にパスタが好きだな」
「あったりまえじゃんかー」
何故か胸をはって答えるイタリアに小さく苦笑を零す。
好きなのは結構だが、パスタのために砂漠で死んで貰っては困る。しかしイタリアならしかねない。
「あ、でも俺はパスタよりドイツが好きだなぁ」
「は?」
「パスタは無くても生きていける、かも・・しれなくもないかもだけどドイツはいなきゃ俺生きていけないもん」
「な!?」
言葉の意味を理解してつい赤面する。パスタと並べられるのは恋人としてどうかとは思うが嬉しい。
パスタに勝って嬉しいのもまたあれだが。
「パスタが美味しいのはドイツへの俺の愛だねぇ」
「・・あと、パスタへの愛もだろ?」
にやりと笑って付け足すとイタリアがまたふわりと美しい笑みで微笑んだ。
end
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