Un roman

□※授業中です
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(あーフェリシアーノちゃん、今日も小鳥のように可愛いぜ)

窓の外のグラウンドで体育をするフェリシアーノについ口元が緩む。
美しいブラウンの髪が太陽に反射し四階の自分の席からでも彼の居場所がよくわかった。


(くっそー!ルートずりーな!)


体育ではしゃいでいるのかぐるぐると走りだすフェリシアーノを叱る自分の弟が見えてつい、嫉妬してしまう。
しかも怒っているように見えてなんとなく幸せそうな顔をしているのが自分の位置からすら確認できて余計に腹が立つ。


自分と一学年違うフェリシアーノは教室も階が違い、学校ではなかなか会うことができない。
少し前に授業を抜け出して会いにいったらルートヴィッヒに本気で怒られた。

自分に比べ、ルートヴィッヒはフェリシアーノとはクラスも一緒な上に部活も同じで年柄年中一緒にいる。
学年の違う自分はこうしてグラウンドが覗ける窓際の席から体育の授業中のフェリシアーノを覗くだけでやっとだというのに。


「「はー‥」」


つい口から漏れたため息が何故か重なったことに気付き顔をあげる。
すると前に座っているアーサーの何やら物思いに耽る横顔が目に入った。
傲慢、柄の悪さで達の悪いことに成績優秀で有名な生徒会長アーサー。
いつも横暴で口が悪く、態度がでかいアーサーの笑った顔は2年間クラスが同じなギルベルトもあまり見たことが無い。

そんな彼が珍しく教科書も開かず窓を見ていた。

その視線を追うと先まで自分も眺めていた明るいブラウンの髪。



「‥おいカークランド」
「あん?んだよバイルシュミット」
「お前もしかしてフェリシアーノちゃん‥」
「だ、誰がフェ、フェリシアーノのこと好きなんて言ったんだよっ!!?馬鹿がてめぇっ!!」
「そうか、好きなのか・・」
「好きじゃねぇっていってんじゃねぇか!!馬鹿ぁ!」
「マジかよぉ・・」


ほぼ自爆するように好きだと大声で公言する彼に頭が痛くなる。
まさかアーサーまでもがフェリシアーノのファンだとは。


(本当にどこまでも罪な子だ、フェリシアーノちゃん・・)


勿論自分も立派な被害者の一人なのだが。

一応開いてある白紙のノートに顔を埋める。本当に嫌になる。
なんだってこんなにみんなフェリシアーノが好きなんだ。自分一人が好きだった方が確実につきあえる確立は上がるのに。


「・・てめぇもフェリシアーノのこと好きなのか?」
「当たり前だろ?あんな可愛いんだぜ?」
「本当になんであんなに可愛いんだろうな・・?」


アーサーがほうっとした表情でグラウンドに目をやる。
その頬はほのかに色づき、いつもは無愛想に結ばれた唇は優しげな笑みをたたえ、目つきの悪いと定評の瞳は情熱的な視線でフェリシアーノを捕らえている。


(こんな顔すんだな)


2年間同じクラスで初めてみたこの表情。
改めてフェリシアーノの偉大さを思い知らされる。


「お前にはぜってぇ負けねぇ」


視線をこちらにむき直し、釈然と言い放つ。
先まで優しげな微笑みを浮かべていた口元は不敵につり上がり、傲慢かつ横暴なアーサーらしい表情に戻る。


「俺も柄のお悪い生徒会長様なんかに大事なフェリシアーノちゃん譲れっかよ」
「てめぇも充分柄悪いじゃねーか」
「カークランドほどじゃねぇよ」


負けずにニヤリと笑ってみせた。


目の端で誰ともつかない教師らしき人物がため息をついているのが見えた。



(おい、あれ誰だ?)
(さぁ?教師じゃないか?)


end
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