Un roman
□結婚記念日たる日
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カレンダーについた×印。
今日という日を楽しみにすること一ヶ月。真っ赤なペンでぐるぐると囲ってあるのが今日だと思うとつい口元が緩む。
“結婚記念日”
ちょうど自分とアメリカが結婚してから一年。この一年は色々あった。
結婚してからの生活は付き合ってる時とは全然違ってて。毎日二人分の飯を作って毎日アメリカを送り出した。
小さな喧嘩はそれこそ指では数えられないほどしたし、大きな喧嘩も何度もした。
毎日のように身体を重ねた日もあれば二週間以上お預けだったこともある。
それでも今こうしてアメリカと結婚生活がおくれてるのは自分でいうのも何だが、アメリカもイギリスを心のそこから愛し、またイギリスも心のそこからアメリカを愛しているからだと思う。
だからこの結婚してから一年という記念すべき日が待ち遠しかった。
一年といったら自分たちにとっては大した時間ではないが、それでもこの一年は今まで生きてきた中でも濃い一年だった。アメリカにとってどうだったかは知らないけど。
そしてだからこそ、この記念日にイギリスはささやかな、しかし自分にとっては困難な目標を立てた。
(今日こそは素直に‥)
素直になるのが苦手である自分は結婚してからまだ一度としてアメリカにずっと言いたかった事を言っていない。
これを言ったらきっとアメリカは大喜びして顔中にキスをしてくれるのだろう。言ってみたい、言って上げたい。
それでも何度言おうと口を開いて出てくるのは自分でも呆れるような罵詈雑言ばかり。
アメリカには自分の恥ずかしいところを全て見られているというのに、未だに言えないその言葉を今日という特別な日にうち明けると決めたのだ。
決心してから一ヶ月経つというのにまだ逃げたがる自分を心のなかで叱咤する。
(絶対言うんだ!)
震える手をぎゅっと握りながらアメリカが帰ってくるまでの時間を示す時計を見上げた。
end
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