Un roman
□愛し愛されまた愛す
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長くて意外にも繊細な指が自分の後ろ髪を梳く。さらさらと彼の指が抜けていく感じ。
それが堪らなく気を落ち着かせ、その時間を甘いものとする。
しかし最初はうっとりしていたその手つきにも20分、30分と続けていれば当然のようにだんだんと飽きてくるものだ。
「ねープロイセンー」
「何だー?あーもうイタリアちゃん可愛いなぁ」
「いつまでやんの、コレ?」
「あとちょっとー本当イタリアちゃん天使みたいだぜ」
5分前と全く言葉を返してくる恋人に溜息が零れる。
久しぶりの二人きりの休日。
今日は楽しく遊ぼうと思っていたのに、プロイセンは先から何が楽しいのだか膝に座らせたイタリアの髪を弄るのに夢中で会話すら成り立たない。
これではこの休日を一週間も前から楽しみにしていた自分が馬鹿みたいだ。
「‥それ楽しいの?」
「おう、イタリアちゃん最高だぜ!」
「あっそ‥」
イタリアの方には目もくれずに髪をいじくりまわしながらなんだか見当違いのの返事をするプロイセンにだんだんと腹が立ってくる。
なんだって自分がこんなにつまらない気持ちにならなくてはいけないのだ。
だいたい事の発端はイタリアが髪をとかしてくれ、と頼んだことからだ。もう自分の髪は十分すぎるほどにとかされたのだからこんな事をする必要は全くないというのに。
全くもって腹立たしい。日本風に言えば『遺憾の意』だ。
「プロイセン!!!!」
「はいぃっ!!?」
くるりと勢いよく振り返り大声で名を呼ぶ。自分の喋り方がなんとなくムキムキの親友に似ていて少し驚いた。
突然の事に目をパチクリとさせるプロイセンの頬をぐいっ、と左右にひっぱる。
「いててっ!ちょ、イタリアちゃん!痛い!!」
「プロイセンは俺の髪と俺、どっちが好きなの?!」
「は?」
頬を引っ張られたままの顔で間抜けな表情になるプロイセン。
その顔があまりにお粗末で仕方がないから頬を引っ張っていた手を離してやる。とプロイセンは我に返ったようにまくし立てた。
「いやいやいや!イタリアちゃんに決まってるじゃねぇか!あたり前だろ!!?」
「‥でもずっと髪いじってたじゃん」
「イタリアちゃんの髪だからいじってたんだよ!!髪なんかとイタリアちゃんが釣り合うわけねぇじゃんか!勿論イタリアちゃんの髪はさらさらだし、綺麗な色だし、細いし柔らかいしもう素晴らしいけど!いや別に髪じゃなくてもよかったんだぜ?!指とか舌とか‥」
「うわ、なんかやらし」
わざとらしく嫌な顔をするとプロイセンは大袈裟なほどに悲しそうな顔をする。
自分はきっと当然のように彼がそう言うことを予想していた。それでも髪を弄ってばかりいるプロイセンに苛立ち、問い詰めた。
恥ずかしげもなく褒め言葉を惜し気なく囁き、そんな事で嫌いになるはずもないのに必死にひかないでくれぇ!と喚くプロイセンもプロイセンだがそんな彼にすら愛情を感じる自分も自分だ。
そんな自分達に小さく自嘲の笑みを零しながら擦り寄るプロイセンの額にちゅっとキスをした。
end
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