Un roman

□ツイてる、ツイてない?
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自分には何世紀も片思いをしている相手がいる。

その子はいつも自分ではなく弟に会いに家に訪ねてきて、自分ではなく弟と遊びに行ってしまう。
だから今日、イタリアが弟ではなく自分に「一緒に飲もう」と誘ってくれたのにはもう堪らず叫びだすほどに嬉しかった。



「おーいイタリアちゃーん」
「‥‥」
「もっしもーし?」


返事のかわりにかむにゃむにゃと寝言を零すイタリア。彼の右手にはビールの入ったグラスをゆっくり彼の手から抜きだす。
完全に潰れてしまっているイタリアは気持ち良さげに寝ていて、その幸せそうな表情といったらまるで天使のようだ。

それにしても


(まさかイタリアちゃんがこんなに酒に弱いとは‥)


酒場に来てからまだ30分と経っていないし彼が飲んだ量も勿論たいした量ではない。
――はずだ。


「イタリアちゃん、こんなとこで寝っと風邪ひくぜー」
「んぅ‥にゃ」


起こそうと肩を揺さぶってみるが不快そうに眉をよせるだけでいっこうに起きる気配がない。
酒に弱いという彼の新しい可愛らしい一面を発見できたことは喜ばしい。
しかし今は秋だ。シャツ一枚で寝てしまってはきっとイタリアは風邪をひいてしまうだろう。

なかなか目を覚まさないイタリアを起こすのを諦め、仕方なく自分の上着をイタリアの寒そうな肩にかけてやる。
少し肌寒いが大事なイタリアに風邪をひかせるよりはマシだ。



(イタリアちゃん可愛いー)


くーっと寝息を立てて寝るイタリアはそれはもうとびきり可愛かった。
色白で決めの細やかな肌は酒のせいか少し赤みを帯びていて、閉じられた瞼を縁取る睫毛の長いことといったらどんな綺麗な女性も裸足で駆け出していくほどだ。

この美しい少年と自分のばかでかい弟が同じ年齢だなんてとてもじゃないが信じられない。


ふっと冷たい風が吹き、小さく身震いをする。


(いくらイタリアちゃんの為とはいえ、さすがに寒いぜ・・)

何も羽織っていない肩をさすってからちらりとすやすやと気持ちよさげに眠るイタリアを恨めしげに見る。
もちろんいくら自分が寒いからといって彼の肩にかけた上着をはずすつもりはない。

そこでふと思いつく。


(少しぐらい褒美をもらってもいいよな?)


ゆっくりイタリアの顔に手を伸ばし彼の顔にかかった髪をかき上げる。

小さなピンク色の唇はプルンとしていて見るからに柔らかさげだ。少し触れた頬につい胸が期待に高鳴る。


「では、いただきます」


ゆっくりと顔を近づける。近づけば近づくほどイタリアの顔の細かいところまで見える。
長いまつげの先端、きめ細やかな肌。

徐々にイタリアとの距離は縮まりあと5センチ、3センチ、1センチ・・
自分の唇と彼の唇が触れ合おうとした瞬間、


「ふぁ・・ん、」
「うぉわぁぁぁ!!」


ふいに瞼を開けたイタリアについ驚いて飛び上がってしまう。

なんてタイミングの悪さだ。本当に彼の唇まであと数ミリもなかったというのに。


「んーあれ?俺寝ちゃってた?」
「そ、そだうな!よく寝てたな!!」
「ごめんねぇ、俺お酒弱くてさ〜」


眉を八の自にしながら謝るイタリアに頑張って笑顔を作りながら笑う。
ああ残念すぎる。もう自分はとことんついていない。


「あれ?この上着・・?」
「あ、それは」
「この匂いはプロイセンのでしょ!上着着せてくれたんだねーありがとー!」
「え・・なんで俺って分かった?」
「へっへっへー匂いだよー」


胸をはって自慢げに言うイタリアについ吹き出してしまった。


(「ヴェストがイタリアちゃんは犬っぽいっていってたけどホントなんだな」)
(「えー俺ってそんなに犬っぽい?」)
(「ぽいぽい!」)

end
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