Un roman
□シャツの下の
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第一ボタンまで堅苦しく閉められたシャツ。きっちりと結ばれたネクタイ。
ピカピカに磨かれた靴に糊の利いたしゃんとした上等そうなスーツ。
全てが全てあまりに禁欲的で笑えてしまう。
恐ろしいほどに身嗜みに気を使うイギリスは(勿論、アメリカだって気にしていないわけではない)いつでもラフな恰好を嫌い、しっかりとしたシャツを着込んでいる。
プライベートで会う時ですらその恰好なのだから随分な話だ。
昔からアメリカに対してもだらし無い恰好をするのを嫌がり、すぐにスーツやらなんやらを着させようとした。
この前だってあえて破けているジーパンを貧乏臭いと縫おうとしてきた。破けているのと縫った跡があるの、どちらが貧乏臭いというのだ。
なんども彼に流行りの恰好をするように薦めてきた。
いくら中身が四桁のおっさんといえ、見た目は23歳なのだ。しかも飛び切りに顔は可愛いくて体型は華奢なのだから似合うに違いない。
しかしいくら言っても彼は首を縦に振ろうとはしなかった。
強情な彼にアメリカも躍起になって服を着させようとしていたが、最近は少し考えが変わった。
(イギリスはあの恰好が1番似合うのかも)
目の前で紅茶をすするイギリスをみて思う。
家にいるというのに今日の彼の恰好もまた、シャツにネクタイにベスト。イギリスにしたら一番ラフな恰好なのだろう。
堅苦しく閉じられたシャツのボタンを外すと目に飛び込んでくる白い肌。
糊の利いたスボンを取り払うと見える、細く柔らかな足。ネクタイを緩めるときの扇情的な仕種。
禁欲的な服装から覗く色気がたまらなく、アメリカの欲をそそった。
今も彼のシャツの下は昨日つけたアメリカのマーキングだらけだと思うとついごくりとのどが鳴る。
なにより最近の格好は露出が多い。
短パンだったりノースリーブだったりと好きの多いイギリスには着せられないような恰好ばかりだ。
自分の前だけなら良いが他の者の前になどとてもじゃないが出せない。
(特にフランスなんかには見せられないな・・)
出された紅茶に口を付けながらアメリカは一人そんなことを思った。
end
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