Un roman

□いつかは見てみたい
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アメリカは優しい。イギリスは面白い。
フランスは楽しい。ロシアは温かい。中国は親切。

「あとねーあとねープロイセンは頼りがいがあるし、ロマーノ兄ちゃんは気遣い屋さんで・・」
「・・そうか」
「うん!みんないい人だよ!俺、みんな大好きだぁ」

誰もが誰もいい人で敵も味方も関係なくみんな大好き。

(すごい、な・・)

全てを愛し、全てを褒めるイタリア。自分にはとうてい出来ない芸当。

彼が話す知人達は自分が知っている彼らとは違う。
そんなに優しく無いし、面白くもないし、かっこよくもなければ温かくもない。


きっと彼が見えてる世界と自分が見えてる世界は違うものなのだ。
イタリアに見えているのは全てが美しく、清らかに見える世界。自分に見えているのはその真逆。

どちらが正しいなんて言うつもりもないけど、あきらかにイタリアの見ている世界のほうがいい。
全てを愛せるような世界のほうがいいに決まってる。


(いつか見てみたい、お前が見ている世界を)


心が滅びようとも醜く朽ち果て息を引き取ろうともその最後の一瞬だけでもイタリアの見ていた世界を見てみたい。
何もかもが美しく、優しく、清らかな世界をこの目で見てみたい。


「いつか、な」
「ヴェ?どうかした?」
「いや、こっちの話だ」
「ふーん。あ、でね、ドイツは一番優しくて楽しくて面白くて温かくて親切で頼りがいあるよ!」
「っ!!?」


驚いた。とても驚いた。イタリアには自分がそう見えるのか。


『一番優しくて面白くて楽しくて温かくて親切で頼りがいがある』。 その言葉はどれもまるで自分とは対局にあるような気がした。
でもイタリアには自分がそう見えるらしい。

ふっと口元に笑みが零れる。
不思議そうな顔をするイタリアの頭をくしゃりと撫でた。




「本当に見てみたいものだな」
「ヴェ?」

end
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